いまの自分の香りをつくる、調香セッション
なんでもすぐ手に入る世の中だからこそ、自分の軸をちゃんと持っていたい。
自分のことを深く知る手がかりとして、かしだゆきえさんが提案してくれたのが、調香。
調香とは、香りをつくること。
さまざまな香りを試してもらいながら、カウンセリングし、その人のいまを表す、香水をつくります。
「調香は香りに特化したもの。本能的な嗅覚に、ダイレクトに働きかけます。植物の香りが持つ薬効を生かした、アロマテラピーはヨーロッパで近代に確立されたものですが、香水は古代から愛されてきたもの。正倉院にも香木がありますが、国と国の交換物だった、神様にお供えする、高貴なものでした」
香りによって、記憶が呼び覚まされ、無意識のうちに、心と身体が動きます。
「自分を見失っている人は、自分がどういう感覚を持っているか、自分がわからなくなってしまっている。いらないものを削ぎ落とし、こりかたまった脳をゆるめることで、次の一手が見えてくる。それが、自分の中の自然な欲求。本当にやりたいことなんだと思います」
香りの力で、本来の自分が見えてくる
香りは自分を表すものなので、そのときどきで、変わっていくもの。かしださんは、アロマテラピーと同時に、調香を学びはじめ、自分自身が変わっていくのと同じに、香りも変わっていくのを実感したと言います。
「脳は、体の司令塔。身体は保守的なのですが、脳によって先導されるから、ややこしいんですよね。第一に、"脳の深いリラックス"を目指しています。身体は脳のリラックスによりある程度は緩むかもしれませんが、身体は身体で相応しいアプローチを並行して行っていく事で相乗効果を得られるはずです。調香では、香りを一つずつ嗅いでもらい、その香りの印象、体の反応をお聞きするのですが、過去の記憶とつながって、両親のことや思い出のシーンが出てくることもあるので、寄り添いながら、香りをつくっていきます」
好きな香りをつくるというのとは、また違う。永遠にこの香りが、私の香りというのではなく、いまこのときの自分を表す、香り。
調香は、一対一で集中しておこなうため、調香セッションは、お店の休業日である水曜・土曜・日曜に完全予約制で。1時間半ほどにわたり、じっくりゆっくりとカウンセリングします。そうして調合し、出来上がりは後日、5mLの香水瓶に入れてお渡しです。
「調香のタイミングは、自分のサイクルがうまくいっていないとき、節目のときがおすすめです。使い方は香水と同じ、手になじませて香りを嗅ぎます。香りの精でバリアが解かれて、感覚がリセットされるような心地よさがあります」
香りの精とは、小さな小さな香りの粒のこと。化学的に言うならば分子、1粒1粒が集まって香りになります。朝の始まりに、心がざわついたときに、一日の締めくくりに。香りはお守りみたいに、寄り添ってくれます。
「だれもが本来の役割を持っているのだけれど、そのことに気づけない人もいる。香りは奥深くまで届くものだから、何らかの気づきの手助けになれば。必要なくなれば、それでいいと思います」
自分を整える手段として、選択肢の一つにできれば。ちょっと強くなれそうです。
maka
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宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。
https://www.instagram.com/miyanlife/