日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
6月21日 12時32分
二十四節気・夏至(げし)
一年のうちで昼が最も長い日
北半球では、一年の中で昼の日照時間が最も長く、夜が最も短くなる日。そろそろトンボが飛び、ホタルが出始めるころです。
この時期には山の上からおりてきた田の神様が、再び山に戻っていく「サノボリ」神事が行われる地域も。
この神事は、神棚にぼたもちや祝い飯(五目飯)などを供えて、田植えが終わったことを報告するもの。無病息災に感謝し、神事のあとはお供えを下ろして家族でちょうだいします。
夏至の期間の七十二候
6月21日から6月26日ごろ
夏至初候・ 乃東枯[なつかれくさかるる]
「乃東」(だいとう)=ウツボグサが枯れ始めころということから、この時期の七十二候にこの名がついています。ウツボグサは夏至を過ぎると枯れ始めるので「夏枯草」(かごそう)とも呼ばれ、利尿作用のある漢方薬として有名です。
6月27日から7月1日ごろ
夏至次候・ 菖蒲華[あやめはなさく]
菖蒲の花が咲くころです。品のあるたたずまいの菖蒲は、立ち姿が優雅で美しい人にも例えられる花。曇った空の下で咲き誇る青紫色の大輪の花が、見る人の目を楽しませてくれます。
7月2日から7月6日ごろ
夏至末候・ 半夏生[はんげしょうず]
半夏生(はんげしょうず)は夏至から数えて11日目のころ。葉の下半分が徐々に白く変化し、白い穂状の花をつけるドクダミ科の多年草“半夏生”(はんげしょう)が、畑のまわりの溝や山里に立ち上がるように咲き始める時期ということからこう呼ばれています。半夏生の花が咲き始めたら、田植えもそろそろ終わり。一息つくころです。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。