(『会いたい。東京の大切な人 私の愛するお店』より)
シンプルな素材を使ってつくる、安心なおやつ
国立駅から南側へ出ると、いつも街並みの美しさにハッとさせられます。目の前には大学通りというまっすぐな道が延びていて、春の桜も秋の紅葉もとてもきれい。そこから放射状に路地が広がっているのも面白いなと思います。この南側の道は、昭和初期には滑走路として使われていたのだそう。高い建物がなくて空が広く、とても気持ちがいいのです。
そんな街並みを楽しみながら向かうのは「フードムード」。店主のなかしましほさんが「ごはんのようなおやつの店」というように、粉の風味がしっかり味わえる焼き菓子が並んでいます。
クッキーもビスケットもクラッカーも、どれもサクサクと歯ごたえがよく、甘いものもしょっぱいものもあるので、止まりません。その秘密を聞いてみると「バターを使わずに、菜種油でつくっているんです。菜種油や粉、てんさい糖は北海道、きび糖は鹿児島のものを使っています」と。しほさんが吟味した、最小限のシンプルな素材でていねいにつくられています。
味が確かなうえに、パッケージがかわいいので、手土産にもぴったり。だれにあげても喜ばれます。私も来ると必ず、小分けになった焼き菓子を買いますし、運よく「クッキーBOX」があったらうれしい。
基本的に通信販売はあまりしていないので、開店前からお客さまが並んでいることもあります。「通信販売まで手がまわらないということもありますが、できる限りお客さまにお菓子のことを説明して交流したい。 それから国立に来てもらいたいというのもあります」。
後藤さんの“勝手に観光案内”は、しほさんの影響!?
そもそも、しほさんが国立に工房を構えたのは、約15年前。初めは自宅を改装したスペースでした。その後、焼き菓子を販売するお店をオープンして、約5年前にいまのお店に。
お店ではいつもお菓子の説明だけでなく、周りのおすすめのお店も教えてくれます。せっかく国立に来てくれたのだから、と。私も自分のお店に来てくださったお客さまに勝手に観光案内をしているのは、しほさんの影響かもしれません。
そのサービス精神は、お店の販売スペースにも表れていて、焼き菓子だけでなく、おすすめの菜種油や粉も並んでいます。著書を出されていることもあり、たくさんの人に手づくりのおやつを楽しんでもらいたいという気持ちが伝わってきます。
全国にファンがいて、しほさんの味が広がっていくのは本当にすごいこと。以前「hal」でイベントをしてもらったこともあるのですが、地元のお客さまにも喜んでいただけて、うれしかったのを思い出します。
そしてさらにうれしいのは、いまの店舗になってからイートインスペースができたこと(現在は休業中)。季節のジャムを挟んだ「シフォンサンド」やドライフルーツたっぷりの「アースケーキ」が食べられるのです。
手土産を買いにといいながら、こちらが楽しみだったりして。またあのふわふわのシフォンサンドを食べたくなってきました。
〈撮影/石黒美穂子 取材・文/晴山香織〉
お話を伺った人
なかしましほさん
なかしま・しほ レコード会社や出版社、オーガニックレストラン勤務を経て料理家に。体にやさしい素材でつくるお菓子が人気。 全国でお菓子教室も開いている。
<なかしましほさんよりひと言>
いまは店頭営業をお休みして、通信販売のみを行っています。1日も早くみなさんにまたご来店いただけるよう、その日までお菓子を焼き続けます。
foodmood(フードムード)
東京都国立市西 2・1 9・2
042-573-0244
http://foodmood.jp/
インスタグラム:@foodmoodshop
※現在は不定期で通販のみの営業。
後藤由紀子(ごとう・ゆきこ)
静岡・沼津で器と生活雑貨の店「hal(ハル)」を営む。著書に『私の愛するお店』『おとな時間を重ねる』(ともに扶桑社)などがある。YouTubeチャンネル『後藤由紀子と申します。』公開中。
インスタグラム:@halnumazu @gotoyukikodesu
http://hal2003.net/
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