日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
7月7日 6時5分
二十四節気・小暑(しょうしょ)
いよいよ梅雨明け。その目安の日。
小暑は梅雨明けの目安でもあり、太陽の光をまぶしく感じるころです。
「大暑来れる前なればなり」といわれ、梅雨が明け、暑さが徐々に厳しくなってくることから“小暑”と呼ばれています。
暑中見舞いを出し始めるのもこの時期からです。
そして7月7日は七夕。天の川をはさんで暮らす織姫(織女)と彦星(牽牛)が一年に一度会えるといわれる、ロマンチックな伝説の日です。
五節句(※)のひとつで星祭りともいわれ、5色の短冊に夢や願い書いて笹竹に吊るします。
※「五節句」・・・一年に5回ある節句行事のこと。中国から伝わった習わしが日本の年中行事と結びつき、いまに続いています。邪気を払い、身心を清め、無病息災を願う意味があります。
小暑の期間の七十二候
7月7日から7月11日ごろ
小暑初候・ 温風至[あつかぜいたる]
雨が降ったり晴れたりと天候不安定で蒸し暑いころ。なまぬるく湿った風が吹くことを「温風」と表現したのは、人々の自然な思いからなのでしょう。いまは冷房機器が発達して快適な暮らしができますが、昔はうちわや扇子を使って風を送り、寝るときは蚊帳を張り、風鈴の音で涼しさを演出するなど、暑さをしのぐさまざまな工夫がなされていました。
7月12日から7月16日ごろ
小暑次候・ 蓮始開[はすはじめてひらく]
ハス池のある神社仏閣や庭園、公園などでは、美しいハスの花が楽しめるころ。夜明けとともに薄紅色の大輪の花があちこちで咲き始めます。ハスの花は仏様に近い花とされ、旧暦でお盆を迎える地域では、この時期にお供えとして飾られることもあります。
7月17日から7月22日ごろ
小暑末候・ 鷹乃学習[たかすなわちがくしゅうす]
鷹がひなから成長するころです。立派な勇姿で堂々と空を飛ぶ鷹も、始めは羽ばたいては落ち、羽ばたいては落ちを繰り返し、何度も失敗しながら、飛び方を自らの体で覚えるということを意味しています。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。