保護犬とはぐくむポジティブで豊かな暮らしをご紹介。イラストレーター・オカタオカさんが、2020年7月に家族として迎えた臆病な元保護犬「アビー」との一喜一憂の日々をつづります。今回は、初めてのドッグランと、そこで出会った元保護犬ビーグルのお話です。
元保護犬アビー、公園デビューのついでにドッグランもいってしまう
アビー、走ってごらん
前回は初めての車でのお出かけについてでしたが、今回はその続きです。
公園散歩だけで帰るつもりでしたが、我々夫婦ともども調子に乗り(アビーごめんね)、ドッグランにもいっちゃえ〜! というお話です。
小高い丘で休憩した後、目指すはドッグラン。
相変わらずルンルンのアビーでしたが、ドッグランへ近づくと、え、なにここ? といった感じで、みるみるしっぽが下がっていきました。
入り口は犬が逃げてしまわないよう二重になっているため安心なのですが、アビーにとってはその扉も恐怖の対象で、扉を開けようとすると懸命に後退り。
そんなときは即抱っこです(ありがたいことにアビーは大人しく抱っこさせてくれます)。
こちらのドッグランは大型犬・中型犬・小型犬の3エリアに分かれており、アビーは13kgなので中型犬エリアです。
ランには3匹のわんちゃん。
こんにちは〜と飼い主さんたちに挨拶を交わし、リードをつけたまま辺りをしばらく探索。
はじめは挙動不審に右往左往していましたが、次第に落ち着いてきたので、いよいよリードを外してみることに。内心走るかな? どうかな? とドキドキな我々。
「さあ、アビー! 思い切り走ってごらん!」と口走りはしないもののそんな気持ちでリードを外しましたが……その気持ちとは裏腹にじっと動かないアビー。あれ……?
きっとはじめてのシチュエーションにどうしていいのかわからない状態だったのだろうと思います。そんななかいきなり走れというのは無理もないです。
ポンポンと背中を叩くととぼとぼと歩き出し、そのままゆっくりとすみっこの草が生茂るゾーンに向かうアビー(やっぱり隅っこが落ち着くのね)。
つかず離れずの位置でアビーを見守っていたのですが、呼んでみることに。
今までリードをつけた状態でしか呼び戻しの練習をしていなかったので不安でしたが「アビー! おいで〜!」と呼びかけると、こちらを振り向きものすごくゆっくりとこちらへ向かってきてくれました。
視線を合わせるのが苦手なので俯きがちではありますが、一歩一歩確実にこちらへ近づいてきます……!
その様子に感激すると同時になんだか愛しい半分おかしい半分で夫婦揃って大笑いしてしました。
こちらへようやくたどり着くとこれでもかというくらい褒めたのを覚えています。
その後も基本草むらをクンクンするだけでノーランでしたが、呼び戻しができただけで十分すぎるほどのドッグランデビューでした。
ドッグランで出会った元保護犬ビーグル
ランにいた3匹のうちの1匹は元保護犬のビーグルだったのですが、その飼い主と少しお話をしました。
そのビーグルは8歳で、生まれてこのかたずっとブリーダーの元で繁殖犬として生きていたそうです。
保健所からやってきたのですか? と聞くと、直接ブリーダーから引きとったと話してくれました。
後々調べるとブリーダーが直接里親を募集することは少なくないようです。
殺処分が待っているかもしれない保健所へ連れて行くよりは“マシ”なのかもしれませんが、結局はルートが違うだけで用済みになったあとは誰か面倒見てね、というその無責任さにとても腹が立ちました。
ですが飼い主の方は僕以上にさまざまな思いを抱えているだろうと思うと、それ以上は何も聞けませんでした。
ビーグルとしては小柄で、こんな身体でひたすら産まされてきたのかと思うとやるせない気持ちになったのですが、人には慣れているため人懐こく、とても楽しそうに過ごしている姿はアビーとは対照的でした。
一言に“保護犬”といっても改めていろいろな境遇、性格の子がいるのだなと思いました。
駐車場への道も落ち葉の絨毯を通りルンルンでしたが、車に近づくと様子が一変、車乗りたくない! と言わんばかりに、思い切り踏ん張り身体全体で意思表示をするアビー。
そう、そんなときも即抱っこです。
帰りの車中もまた震えてしまうのではないかと心配でしたが、初めてのことだらけで疲れきったせいかウトウトしていました。
そんなアビーに「またお出かけしようね」と声をかけながら家路についたのでした。
オカタオカ
犬と車が好きなイラストレーター。宮崎生まれ、鹿児島育ち。現在は東京都在住。桑沢デザイン研究所卒業。雑誌や書籍などを中心にイラストレーションを手がける。バンド“すばらしか”の加藤寛之とのポッドキャスト番組『クルマのふたり』も配信中。
インスタグラム:
@okataoka(イラストレーション) @abbie_in_the_life(保護犬日記)
犬を飼いたいと思ったときに、ペットショップで「買う」だけでなく、保護犬を「迎える」という選択肢もあるということを広く伝えたい。そんな思いから生まれた1冊です。
保護犬を実際に迎え入れた方々の、ありのままの暮らしを楽しく伝えることで、保護犬たちの魅力を伝えるとともに、少しでも保護犬を迎えるきっかけとなればと願っています。