こんにちは、ナビゲーターの陳小爵(チェン・シャオジュエ)です。
台北から新幹線で1時間半、あっという間に彰化駅に到着します。そこから車を走らせて、靴下の看板が多くなったなと思ったら、そこが台湾で製造される靴下の約9割が生まれるという“靴下のふるさと”社頭です。日本からの注文もたくさんあるのだとか。一体どんな場所なのでしょう?
台湾で靴下産業が全盛期だったのは1996年ごろのこと。社頭には靴下工場や作業場がおよそ250軒ほどもあり、3000人あまりが靴下づくりに従事するほど栄えていたそう。
いまでは年々縮小してきているけれど、私たちが台湾で日用品のブランドをつくろうと思ったときに、訪ねたのが社頭にある靴下工場でした。私たちデザイナーも靴下づくりは初めて。
最初の3年間くらいはしょっちゅう工場を訪れて、織りについて職人さんたちに教えてもらいました。9年目を迎えたいまも、何かあると社頭の工場まで飛んで行っています。
社頭は私たちの靴下づくりが始まった大切な場所なので、「+10・テンモア」ができた2012年、初めてのカタログ撮影ではこの地をロケーション撮影の舞台に選びました。
では、まずは靴下工場にお連れしましょう!
社頭の靴下工場
「+10・テンモア」が設立されたときからずっと靴下づくりをお願いしているこちらの工場。
1976年に先代がたった5台の機械で始めて以来、現在では二代目の兄弟が継ぎ、地元でも有数の規模に成長しています。(写真左側にいるのが先代、右側が二代目です)
私たちが台湾で日用品のブランドをつくりたいと思っていたときに、靴下なら糸の一本からデザインできることに気がつき、靴下ブランド「+10・テンモア」が生まれました。
靴下の編み機はとても複雑なので、扱うには経験や知識が問われます。問題が起きたらそれをすばやく見つけられる職人さんたちを尊敬しています。
編み上げられた靴下は、加熱しながら圧力をかけ、足にフィットするL字型形に定型されます。この作業場はとても熱いんですが、逆さまにして型にかぶせられた靴下が行列をつくって動いていく姿はとてもかわいらしいです。
ローカルな朝市「社頭市場」
ここからはカタログ撮影の様子で空想旅行を続けましょう!
私たちにとって市場は自然体でいられる生活圏。この立派な文化は皆に伝える価値があると思い、社頭のローカル朝市で撮影を行いました。
この日よけに使われている幕は、数年前の台湾総統選挙のときのものが逆さまにされたものです。こんな使い方をするなんて、なかなかクリエイティブです。「特価」と書かれた貼紙の字も、手書きの味がありますね。
撮影をしていると、バイクに乗ったおじちゃんおばちゃんたちが目の前を通過していきます。皆が生き生きとして自然体な市場です。
社頭市場
所在地:彰化縣社頭鄉社斗路一段118號あたり
営業時間:5:00〜13:00(店舗によって異なります)
運動公園内のスケート場
台湾ではなぜか昔からアイススケートが流行っていて、私も子どものころにはスケート靴を買ってもらったほどでした。
いまでも子どもたちの間ではインラインスケートが流行っていて、ちょっと大きめの運動公園には屋外スケート場が設置されています。
そのあたりによくあり、ともすれば退屈だと思われがちなものをじっくり観察して、みんながまだ気付いていない見せ方ができないかと、いつも考えています。
社頭鄉運動公園直排輪場
所在地:彰化縣社頭鄉中山路一段172號
電話番号:04-873-2621
小学校の校庭でピクニック
台湾の小学校は休日や夜間に校庭が一般開放されていて、バスケットボールをしたり、競技コースに沿ってぐるぐる歩いたり、近所の人たちが運動をしにやってきます。
私たち靴下王国「+10・テンモア」は、そんなこの場所に専属シェフによる色とりどりのごちそうを並べて、ピクニックをしてみました。
おいしいものが大好きな私たち。食事するときに大切にしているのは心ゆくまで堪能すること!
いつもレストランでものすごい量を頼んでは驚かれます。
ここに並んでいるのは、私たちにとっては軽食です。精緻なものでなくていいから、熱々のものをたっぷり食べて、遊ぶようにもりもり仕事します。
後列真ん中のふたりが、靴下工場の二代目兄弟。「+10・テンモア」は「靴下兄弟」と呼んでいて、本当の家族のようなお付き合いをしています。
社頭はいかがでしたか?
ローカル列車の社頭駅を出てすぐのところには、靴下の歴史が分かる「台灣織襪文物館」もあります。
日本統治時代の素敵な建物の中で、靴下の織り機の紹介がされていて、デモンストレーションも見ることができます。
まだ自動化されず、手で動かしていた時代の織り機も置いてありますので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
+10・テンモア
2012年に台湾で設立された靴下ブランド。日本語で紹介された書籍に『+10 テンモア台湾うまれ、小さな靴下の大きな世界(トゥーヴァージンズ)』がある。2016年から毎年春夏には台湾に生息する海の生き物をモチーフにしたデザインを発表。4月15日に登場する2021年春夏の新作シリーズは『micro-』と題し、宇宙の中で孤独な物質はなく、アメリカの思想家ヘンリー・ソローが「野性の中に世界は保存される」と語っているとおり、すべてが関連していると説いている。
日本語オフィシャルサイト
https://www.10moresocks.com/?Culture=ja-jp
日本からは通販サイト「Pinkoi」でも購入可能
https://jp.pinkoi.com/store/10moresocks
取材・文/近藤弥生子(こんどう・やえこ)
2011年2月より台湾在住の編集・ライター。日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う「草月藤編集有限公司」を主宰。台湾で妊娠・出産後に離婚し、シングルマザーとして6年間過ごしたのち、台湾人と再婚。現在2児の母。ブログ『心跳台湾』で台湾での暮らしを綴っている。初の著書『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』(ブックマン社)amazonで見る が発売になったばかり。
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