日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
8月23日 6時35分
二十四節気・処暑(しょしょ)
残暑は厳しくも少しずつ秋の気配が
「処」の字には「止まる」「定む」の意味が含まれており、「処暑」は夏の暑さが和らぎ、収まってくるころとされています。
とはいえ残暑はまだ厳しく、台風の季節にも入り、農家では秋野菜の種をまく日々に天気予報が気になるところです。
一方で、そろそろススキが穂を出し、日一日と、秋の空気を感じるようにもなってきます。
処暑の期間の七十二候
8月23日から8月28日ごろ
処暑初候・ 綿柎開[わたのはなしべひらく]
木綿の原料である丸い綿の実がはじけるころ。
汚れを知らぬ赤ちゃんのような、ふわふわで純白の綿。
“柎”は花の萼(ガク)のことで“はなしべ”“うてな”と読みます。
それが、この季節を感じ取ってポンとはじき出すので、このような表現になったといわれています。
8月29日から9月1日ごろ
処暑次候・ 天地始粛[てんちはじめてさむし]
「粛」とは物事が衰えていくことを意味し、七十二候では、暑さも衰え、天地が涼しくなったころを表現しています。
自然の移ろいは、風の向き、雲の高さ、月の出方が教えてくれます。
刻々と表情をかえる朝焼けの景色もまた、とてもドラマチック。
ときどきは早起きをして、太陽が昇りきるまでの一瞬の美しい光景を楽しんでみませんか。
9月2日から9月7日ごろ
処暑末候・ 禾乃登[こくものすなわちみのる]
「禾」はカ、いね、のぎ、などと読み、漢字の“のぎへん”にあるように、穀類の総称です。
穂が出ている穀物を指し、多くは「稲」の意味を表します。
この七十二候は、その稲が実るころを表現しています。
“登”を「みのる」と読ませるのは、さまざまな苦労や難関の山を乗り越えて、収穫にまで至った稲だということを、教えてくれているのかもしれません。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。