(『ピワンのおカレー』より)
吉祥寺・ピワンの「おカレー」
「カレーをお茶漬けのように日常的に食べてもらいたい」
お雑煮、おそば、おみそ汁……。昔から身近にある料理には、みんな「お」がつく。だから、カレーにも。カレーに親しみと敬意を込めて、そう呼んでいる「ピワンのおカレー」。
「ピワン」のカレーは、サラッとした軽さがあり、胃にもたれにくく、辛さ控えめ。しっかりとスパイスを効かせた奥行きのあるベースにユニークな素材の合わせが絶妙で、多くのカレーファンをとりこにしています。
店主の石田徹さんに、ピワンで普段から提供しているカレーを、自宅でも再現できるよう、なるべく簡単なスパイスと手法でレシピに落とし込んでもらいました。
食後には、“まるで温泉につかったあとのような気分” と言われるほど、体がじわっと温まり、心身ともに元気になれるカレーです。
ベースは2つのペースト
カレーの土台になるのは「玉ねぎペースト」と「トマトペースト」。この2つのペーストをベースにしてカレーのバリエーションを広げます。どちらもしっかりいためて玉ねぎの甘みやうまみを引き出します。
今回は「トマトペースト」のつくり方を。
カレーだけでなくふだんのおかずや副菜にも活用すれば、風味豊かでコクのある調味料として活躍します。
TOMATO PASTE
トマトペーストのつくり方
カレーの土台となるペーストです。手軽なトマト缶を使用しますが、しっかりといためることで酸味が飛んで、深みのあるトマトペーストができ上ります。
いためるのに時間がかかりますが、一回作れば4回分(16皿分)のペーストができます。保存もできるのでていねいにつくりましょう。
料理に使えば簡単な手順で味が決まるので重宝しますよ。
材料(4袋分・でき上り約680g)
● 玉ねぎ | 4個(1kg) |
● 塩 | 小さじ1 |
● 油 | 120g |
● 赤とうがらし | 1本 |
● シナモンスティック | 1/2本 |
● ローリエ | 2枚 |
● トマト缶(ダイス) | 2缶(800g) |
SPICES MEMO
シナモン(スティック)
だれでも知っているおなじみのスパイスで、甘い香りが特徴。カレーづくりではスティック状のものを使うことが多い。じわじわとカレーの香りがにじみ出てくる。
つくり方
1 玉ねぎは縦半分に切ってから繊維に垂直に1cm厚さに切り、向きを変えて薄切りにする。
2 フライパンに油、赤とうがらし、シナモンスティック、ローリエを入れ、香りが立ってくるまで弱火で5分ほど加熱する。1と塩を加えて強火にしてさらにいため、玉ねぎ全体に油が回ったら、しんなりするまで木べらで2~3分に1回混ぜながらいためる。
3 玉ねぎの端が色づいてきたら中火にして、木べらで鍋底をこすりながら2~3分に1回混ぜ、さらにいためる。
4 全体がきつね色になったら中火にしてトマトを加える。
5 トマトを木べらでつぶしながら玉ねぎと混ぜ、トマトの水分を飛ばす。木べらで2~3分に1回鍋底をこすりながらいためる。
6 表面に油がにじみ出てきたら弱火にする。
7 木べらで鍋底をこすったときに、ペーストが戻ってこなくなるまでしっかりいためる。
8 粗熱を取ってから、赤とうがらし、シナモンスティック、ローリエを取り出して4等分(1袋約170g)し、それぞれ冷凍用保存袋に入れ、冷凍室で保存する。
* 冷凍室で1か月保存可能。使用する際は、室温で自然解凍するか、袋ごとぬるま湯につけて解凍する。電子レンジを使用する場合は解凍モードで。通常の加熱モードにすると、油が高温になって袋が溶けてしまう可能性があるので要注意!
CURRY with TOMATO PASTE
合いびき肉とグリーンピースのドライカレーのつくり方
合いびき肉を使ったふわっとして口当たりがやさしい軽いカレーです。使うスパイスはカレー粉と五香粉だけ。スパイス煮卵をくずして混ぜながら食べるのもおすすめです。
材料(4人分)
● トマトペースト | 1袋 |
● 油 | 大さじ1 |
● 赤とうがらし | 1本 |
● にんにく(すりおろす) | 小さじ1 |
● しょうが(すりおろす) | 小さじ1 |
● A | |
・塩 | 小さじ2弱 |
・カレー粉 | 大さじ2 |
・五香粉 | 小さじ1 |
● 合いびき肉 | 500g |
● グリーンピース * 生のグリーンピースがある時期は下ゆでして使う。冬などシーズンではない時期は缶詰などで代用するか、好みのゆでた豆を使って。 | 60g(正味) |
● ぬるま湯(40~50℃) | 100mL |
● ライス(日本米) | 3合分 |
〔トッピング〕 | |
● スパイス煮卵(※) | 4個 |
● 粗びき赤とうがらし | 少々 |
● 粗びき黒こしょう | 少々 |
SPICES MEMO
五香粉
中国のミックススパイス。さんしょう、シナモン、スターアニス、フェンネル、陳皮、クローブなどから5種類のスパイスをミックス。ふだんの料理に加えると、まるで中国に行ったような気分を楽しめる。
つくり方
1 鍋にトマトペースト、油、赤とうがらしを入れ、木べらで混ぜながら弱火でいためる。
2 トマトペーストからいい香りがしてきたら、にんにくとしょうがを加え、3分ほどいためる。
3 合わせたAを加える。
4 たえず木べらで混ぜながら、スパイスが全体になじむまで2~3分いためる。
5 合いびき肉を加えて中火にし、混ぜながらいためる。
6 肉をほぐしながら全体に火が通るまでいためる。
7 ぬるま湯とグリーンピースを加えてさらに5分ほどいためる。
8 水分が蒸発して油が出てきたらでき上がり。器にライスと盛り、半分に切ったスパイス煮卵をのせて粗びき赤とうがらしと黒こしょうをふる。
※ スパイス煮卵のつくり方
材料とつくり方(つくりやすい分量)
小鍋にしょうゆ大さじ2、オイスターソース小さじ2、きび砂糖大さじ3、五香粉小さじ1/2、水160mLを入れて火にかけ、煮立ったら弱火にし、ゆで卵4個を加えて5分ほど煮る。そのまま粗熱を取り、6時間以上漬けると卵に味がしみ込む。
* 密閉容器に入れて冷蔵室で3日間保存可能。
本記事は『東京・吉祥寺の人気カレー店 ピワンのおカレー』(文化出版局)からの抜粋です
〈撮影/日置武晴 スタイリング/朴 玲愛 取材/小橋美津子〉
石田 徹(いしだ・てつ)
ピワン(piwang)店主。ピワンとはチベットの弦楽器の名前。1977年、東京生まれ。大学時代にカレー屋でアルバイトをしたことがきっかけでカレーづくりを始める。2012年、東京・吉祥寺のハーモニカ横丁にてカレー屋「ピワン」を開業。たちまち話題になり、行列ができる店になって雑誌などで紹介される。2014年、料理家の村山由紀子さん(写真右)と結婚し二人三脚で店を運営。2019年、ピワンのレトルトカレー(「ど海老カレー」と「黒胡麻担々キーマカレー」)の販売開始。2020年、イベントスペースとカフェを営業する「キチム」とスペースをシェアすることになり移転。2021年6月に著書『ピワンのおカレー』(文化出版局)が発売。
ピワン(piwang)
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-7 吉祥ビル地下
HP:http://piwang.jp/
Instagram:@piwaang
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お雑煮、おそば、おみそ汁……。昔から身近にある料理には、みんな「お」がつく。
だったら、カレーにも「お」をつけたっていいじゃないか。カレーに親しみと敬意を込めて、そう呼んでいるピワンのおカレー。
本書では、ピワンで普段から提供しているカレーを、自宅でも再現できるよう、なるべく簡単なスパイスと手法でレシピに落とし込みました。
point
○ 作り置きできる「玉ねぎペースト」と「トマトペースト」を土台に、そこから広がるカレー30品と、ペーストを活用したおかず、副菜と調味料。
○ ピワン定番のチキンカレー、日替わりでたまに登場する人気の「ど海老カレー」や「黒胡麻担々キーマカレー」のレシピも掲載。
○ 2種盛りカレーでおなじみの「ピワン盛り」の盛り付け方。 など