• 子育て中のお母さんにとって、育児の悩みは尽きぬもの。脳科学的な視点と自身が息子を育てた経験を軸に男の子の育児に関する悩みを解き明かすのが、『イラストですぐわかる! 息子のトリセツ』の著者であり、脳科学者の黒川伊保子先生です。そんな黒川先生に、息子の育て方のコツを伺いました。

    適正睡眠時間には個人差がある。眠りたがる子は寝かせよう

    画像: 適正睡眠時間には個人差がある。眠りたがる子は寝かせよう

    息子育てにおいて、大切なもの。それは「いかに良質な睡眠を子どもに与えるか」だと、黒川先生は語ります。

    「脳が発達しているとき、脳は眠りを希求します。だから、子どもは、総じて眠たがりだし、子ども脳からおとな脳への変化期に当たる13~15歳もまた、ひたすら眠い。眠いときは、眠らせてあげることが大切です。私自身も、息子の脳が発達するゴールデンエイジと呼ばれる9~12歳には、読書と睡眠を優先させるため、中学受験は考えませんでしたし、中学時代も本当によく眠らせました」

    では、いったい育ち盛りの子どもには、睡眠時間は何時間くらいが適正なのかと思ってしまうところですが、個人差が大きいのだとか。

    「適正な睡眠時間については、小学生でも7時間で済む子もいれば、おとなで8時間以上欲する人もいると言われています。それぞれの脳にとっての適正時間は、自ら見つけるもの。もっとも、寝ないで勉強しても、それが身につく人もいるし、寝ないで勉強できるのなら、脳はかなり『眠らないでいられる』ことにタフなのだと思います。なので、すでにお受験済みの方でも、『お受験させたのは失敗?』と思う必要はありません」

    成績と身長が伸び悩んだら、寝る前のスマホと甘いものに注意!

    画像: 成績と身長が伸び悩んだら、寝る前のスマホと甘いものに注意!

    そして、睡眠は男の子の成績と身長に大きく影響を与えます。もし、中学生男子の成績と身長が伸び悩んだら、睡眠が足りているかどうかを、しっかり考えることが大切なのです。

    「注意すべきは、22時以降の携帯端末の凝視と、寝る前の甘いもの。電子画面は目への刺激が強く、見終えた後もしばらく視覚神経を緊張させてしまいます。このため、スマホを長く使うと、寝にくくなってしまいます。

    また、寝る前に血糖値を上げるのも、脳を興奮させてしまうので、良い影響を与えません。風呂上がりのアイスも、美味しいとは思いますが、眠りの質を悪くする大きな要因に。もしも、自分の息子さんが、朝起きてから、ゾンビのように気力がなければ、スマホと甘いものが悪影響になっている可能性も。ぜひ、見直してみてください」

    人の脳は人工知能と一緒。優しいことばをインプットして

    「優しい息子に育ってほしい」という想いは、どんな母親にも共通する願いです。そんなお母さんに向けて、黒川先生は「とにかく優しい言葉をインプットしてあげてほしい」と提案します。

    「日本の母と子は、あまり愛を口にしません。なぜ、子どもが愛を口にしないのか。それは、親が口にしないからです。ヒトの脳は、人工知能と一緒で『優しいことば』を脳に入力しなければ、出て来ません。そのため、私は、自分の息子を育てる際、そこを大きく改革しました。息子が生まれてきたその日から、『あなたが好きよ。愛してる』と伝え続けています。その結果、息子はさまざまにかたちを変えて、優しいことばをくれるようになりました」

    命令形を使わないことが、優しい子どもを育てる秘訣のひとつ

    画像: 命令形を使わないことが、優しい子どもを育てる秘訣のひとつ

    また、優しい息子に育てるために大切なのは「何かしてほしいときは、できるだけ命令形を使わないこと」。

    「命令形を使うと、支配関係になり、やがて、子どもが育って能力が拮抗してくると、反抗されたあげく、あっさり親離れされてしまいます。だから私自身も子育てしているときは、極力命令形を使いませんでした。『食べなさい』ではなく『からだにいいのよ、食べてみて』と言い換えるのが重要です。

    母が息子を頼りにすればするほど、優しい子どもに育つ

    画像1: 母が息子を頼りにすればするほど、優しい子どもに育つ

    さらに、優しい子どもを育てる上で大切なのが、「息子を頼りにしてしまう」と言う手法です。

    「たとえば、公園で遊びに夢中になって、ジャングルジムから降りようとしない息子に『帰るわよ、早く降りてきなさい』と言っても効果はありません。『そろそろ、帰らないと、ママ、カレー作る時間が無くなっちゃう。どうしよう』と困惑して見せると、命令にはなかなか従わない子も、『わかった、帰ろう』と言ってくれることが多いのです。

    脳はインタラクティブ(相互作用)マシン。他者との関係性を常に測っています。ことばは、その関係性をくるりと変えるアイテムなのです」

    そんな脳の機能に基づくと、一度誰かに頼られた側の脳は、自然に、その場のリーダーになってしまうのだそうです。

    「リーダーは、自制して、全体を考えなければいけない。親子関係であっても、この効果は免れません。しかも、客観性優位の男性脳は、幼くても、この機能を発揮しやすいのです」

    愛のことばを、降るほどあげること。命令形を使わないこと。なにかと頼りにすること。幼少期に、たったこの3つを用いて育てるだけで、愛情あふれる息子との対話が手に入るのだと黒川先生は続けます。ぜひ試してみていただきたいです。

    こうした黒川伊保子先生が語る、才能あふれる息子の育て方については、『イラストですぐわかる!息子のトリセツ』(黒川伊保子=著 扶桑社)に詳しくつづられています。


    黒川伊保子さん

    画像2: 母が息子を頼りにすればするほど、優しい子どもに育つ

    脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より株式会社感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元にベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(共に講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)を発表。他に『母脳』『英雄の書』(ポプラ社)、『恋愛脳』『成熟脳』『家族脳』(いずれも新潮文庫)などの著書がある。

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