編み物をはじめてみたい人へ
この冬こそ、編み物をはじめてみたい、ひさしぶりにやってみたい。お家で過ごす時間が増えて、手づくりを楽しみたくなった人はきっと多いはず。
編み物マガジンをつくり、毛糸のお店を営む、「amirisu」代表のオチアイトクコさん、タナカメリさんは、手があいていればチャンスとばかりに編み物を楽しんでいます。
「はじめは自転車の練習と同じ!」。編み物の講師もするトクコさんは、初心者さんにそう言うそうです。
「編み物って、最初は訓練なんです。自転車に乗れるようになるには、練習が必要ですよね。それと同じ、体が覚えないと編めないんです。自転車に乗れるようになったら一生忘れないように、しばらくやっていなくても、体が覚えてくれています。
だから、子どものときにやるといいんですよね。北欧では小学校で編み物の授業があるんです。延々と動作を繰り返し、いかに均一に編むかが、編み物では大事。
たどたどしくても、1カ月は我慢してやり続けてほしい。家で1日15分やれば、どんどん上手になります」(トクコさん)
いい糸が編む時間を楽しくする
トクコさんは、編むことそのものが好き。夕食後、片づけを終えて、夫がTVを観るそばでずっと編んでいるそう。眠くなったら、その日は終わり。
「外出先の待ち時間でも、移動時間でも、隙間があれば編み物で埋めます。そんなとき、昔は本、いまはスマホかもしれませんが、私にとっては編み物なんです」(トクコさん)
「私たちは打ち合わせ中、編み物していてもいいから、スタッフみんな手を動かしています」と、メリさん。メリさんは毛糸の手触りや色にワクワクして、つくりたくなるそうです。質のいい毛糸で編むこと、それが編み物をいっそう楽しくしてくれると、ふたりは言います。
「いい毛糸で編めば、いいものになるし、編んでいる時間も楽しい。編み物は編みあがるまで日数がかかります。冬の間、セーター1枚を編むとして、心地いい糸に触れていられたら、ずっとしあわせでいられます」(メリさん)
「質の良い糸は少し値段もしますが、その糸で編まれた製品はもっと高いものになります。だったら、2、3カ月かけて楽しんで編んで、自分に合うセーターが出来上がった方がいいですよね。
洋服でも、食べ物でも、素材の良さで値段が違う。いいものに触れていると、ものの価値にも、気づくようになると思います」(トクコさん)
ひたすら手を動かし、編んでいる間は無心になれる。忙しい人にこそ、ぜひ編んでみてほしいと、トクコさん。
「編んでいると心が落ち着いて、メディテーションになります。帰宅前にコーヒーショップで編み物をしてから帰るとか、会社と家の間の、ワンクッションにしている人も多いんです。ストレスを感じている方、ぜひ男性にもおすすめしたいです」(メリさん)
amirisuのショップでは、初心者から上級者まで、編みたい気持ちに寄り添ってくれます。暮らしの中に、編み物の時間を。
写真提供:amirisu (モデル、店舗撮影/嶋崎征弘、Brooklyn Tweed撮影/コーダマサヒロ、オチアイトクコさん、タナカメリさん撮影/石川奈都子)
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amirisu
編み物マガジン「amirisu」はじめ、編み物の本を日本語と英語のバイリンガルでつくり、毛糸や編み物の道具などとともに国内外で販売しスクールも主宰する。京都と東京に実店舗があり、オンラインショップも人気。コロナ禍のため、京都店は2021年10月から一時休業中。スケジュールや商品についてはHP&SNSで。
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宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife