次の楽しみにつづく、旅ははじまり
初めて一人旅したベトナムに心惹かれ、何度も通うようになった、高谷亜由さん。料理教室を主宰し、レシピ本もつくっています。
「私がはじめた頃は、ベトナム料理教室なんてほとんどなかったんですが、なかったから良かったんだと思います。どんな方がいらっしゃるだろうって、はじめはちょっとドキドキしましたけど、2006年のスタートから、ずっと通ってくださっている生徒さんもいます」
自分でつくって、食べることで、グッとベトナムが近くなる。好奇心でやってみて、好きになった人も多々。行ってみたいという生徒さんたちからのリクエストで、ベトナムツアーも主催してきました。
「日本人って情報を収集して、準備万端で旅するところがありますよね。私が初めて旅したベトナムは、情報が少なかったからこそ発見があって、感動も大きかった。そんな体験をしてもらいたいから、スケジュールはあえて詳しく伝えないようにしています。
現地の聞き込みで、予定していたお店より、こっちの方がいいとなれば変更するとか。その場の巡り合わせを楽しむのが、旅のおもしろさだと思うから。旅が終わればおしまいじゃなく、次の楽しみにつながる、きっかけになったらいいなって思います」
すぐそばにある、旅に代わる楽しみ
大学在学中に調理師免許を取得し、卒業後、東京のレストランでも経験を積んだ高谷さん。東京で3年を過ごしますが、拠点は、京都と決めていました。
「当時、ベトナム料理店が本当に少なくて、東京で経験を積みました。東京の飲食店にいると、次々新しいものを出さないとならないように感じて、目まぐるしくて。京都の時間の流れ方が、私には合っていました」
アトリエと住まいがある二条は、商店街や信頼できるお店が近くにあって、食材の買い出しもすぐ。まわりは昔ながらのお家が多く、のどかです。休日に楽しんでいるのが、山歩き。京都は山がすぐそば、京都の東から西までぐるりとつながるトレイルコースは、高谷さんのお気に入りです。
「明日、お天気良さそうやなって思ったら、すぐ登山口まで行ける。自然の中にいると、京都やのに、遠くまで来たような気持ちになれます。
天気を見たり、道を選んだり、山にいると自分で決めないとあかんことがいっぱい。ケガできないから、緊張もするし、思いがけないことも起こる。一人旅と同じですね」
旅と同じ、美味しいものも、山歩きの楽しみ。最近は、小さなコンロを持っていって、ちょっとしたアウトドアごはんをつくっています。
「山仲間の友人がインスタントラーメンをつくって山で食べるのが好きで。一緒に登ったときに食べたらすごく美味しかったんです。それから、つくって食べるのが、楽しみになりました。袋麺やパスタをつくったり、ご飯を炊いたり。山ではあたたかいものがおいしくて。
一人で登るのはたいてい低い山だから、1時間くらいゆっくりごはんを楽しみます。山で料理するって、すごく楽しいです」
遠くに行けなくとも、近くに楽しみはある。好きなことを大事に、マイペースで。高谷さんが暮らす京都は、それができる町です。
料理教室「Nam Bo」も、また、旅するような場所。旅したい人にとって、癒しの場です。月ごとにメニューが変わり、定番から郷土料理まで、さまざまお目見えします。ぜひ、知られざる料理と出会ってください。
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高谷亜由さん
料理家。京都・二条にて、ベトナム、タイ料理教室「Nam Bo」主宰。大学在学中に調理師免許を取得し、東京や京都のベトナム料理店などで経験を積む。著書『ベトナムのごはんとおかず』『レシピ 家で呑む』(アノニマ・スタジオ)、『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜』『終電ごはん』(幻冬社)など。料理教室のスケジュール&申込みについてはHPで。インスタグラム:@ayuchao_nambo
宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife