日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
12月22日 0時59分
二十四節気・冬至(とうじ)
この日を境に少しずつ昼の時間が長くなる
冬至は一年で一番、昼(陽)の時間が短く、夜(陰)が長い日。
つまりこの日を境にして、夏至までは昼間の時間が徐々に長くなります。
昔の人々は太陽が沈むことや太陽の光が弱くなることを恐れていたため、冬至を境に、太陽の暖かさの恩恵にあやかれることに感謝して「冬至祭り」をしました。
悪いことが終わって運が上向きになることを意味する“一陽来復”をもたらすとされる日とも言われています。
また、冬至の日は、柚子湯に浸かり、無病息災を祈願します。
冬至の期間の七十二候
12月22日から12月26日ごろ
冬至初候・ 乃東生 [なつかれくさしょうず]
冬至を過ぎると、寒さのために山の草木は枯れ模様。
ただ「乃東(だいとう=うつぼぐさ)だけは、枯野の中でひっそりと緑をたたえて成長するころです。
真冬にもかかわらずに芽を出す、力強い様子を七十二候にのせて言い表したのでしょう。
12月27日から12月31日ごろ
冬至次候・ 麋角解[さわしかのつのおつる]
「麋」とはヘラジカのような大型のシカのこと。
七十二候は元々中国で生まれた暦の考え方なので、このように日本には生息しない種類の動物が登場することもあります。
この時期は、そんなヘラジカの角が生え替わるころ。
ちなみに日本のシカの角が生え替わるのは、春から夏にかけてになります。
1月1日から1月5日ごろ
冬至末候・ 雪下出麦[ゆきわたりてむぎのびる]
地中から湧き出た水が、少しずつ雪や氷の下で動き出し、秋に種をまいた麦が、針の先のような芽を出し、雪の下から顔をのぞかせるころです。
昔の人々は、寒さの中にも芽吹きの兆しを敏感に感じとっていたのでしょう。
しかし実際にはまだまだ寒さは続き、山間部には大雪が、平野部には里雪が降り、関東では北西から空っ風が吹いて「おおさむ、こさむ」の冬景色が感じられる季節です。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。