カフェロッタを閉めて、早2カ月
あらやだ……ロッタを閉めてからもう2カ月ちょっと経っているんですね。
閉店したのが2021年9月30日。
10月は毎日何かしらの撮影、取材、これからの打ち合わせ、そして店のあと片付けで淋しいなんて思う暇もなくバタバタとひと月が過ぎました。
20年間お客様を一緒にお迎えした家具やたくさんの食器達を手離す気持ちの整理、ライフラインのこと、大家さんや不動産屋さんとの最後の話し合いetc、やることの満載でtodoリストとにらめっこの毎日。
こんな作業はもう二度とやだわー、と思っていたけれど、今思えば、毎日ロッタの鍵を開けてあの空間にいられた時間はあたたかな思い出。もう二度とあの場所でお疲れさまの缶ビールが飲めないなんて……。(そこ?)
最終日は、晴れた木曜日
ここらでゆっくりと閉店前の『最後の営業日』のこと、その日の気持ちを思い返し書き残そうと思います。
最終日は晴れた木曜日でした。先頭のお客様は朝6時台から並ばれたそう。
「最後の日は何を着ようかな? エプロンは?」と数日前からいろいろ考えたけど、着飾るのも変だしあえて“いつも通り”に。
これは内緒だったけどね、きっと泣いちゃうだろうなと思ってエプロンのポケットにはハンカチを入れてたの。
お客様の涙を見て胸がぎゅーっとなって『いよいよハンカチの出番か?』というヤバい場面は何度もあったけど、幸い最後の日に一緒に店に立ってくれた愉快なスタッフたち、金沢から自分の店を閉めてまで手伝いにきてくれた息子のおかげで、穏やかな気持ちでいつもの笑顔で最後のお客様を見送れたこと、本当に感謝しかないなぁ。
最高の最高のいままで頑張ってきたご褒美のような最終日(最終美)だったと思います。
カウントダウンに入った最後の一週間、なるべくたくさんのお客様をご案内したくて本心はやりたくなかった時間制限を設けるなど、お客様にはたくさんご迷惑をおかけしてしまったと思います。
みなさん短い時間の中で、えっそんなに食べれるのー? ぐらいのオーダーをしてくださり、キッチンではちょっとクスッとなりました。(あ、失礼ね)
たとえば、食前にメロンクリームソーダ。続いてトースト、カフェオレ、ケーキ2個、最後にコーヒー! でもわかるなぁ……。
これが最後になると思ったら、わたしだって後悔しないよう食べちゃうもん。テーブルに座って待ってる間も店内を隅から隅までじーーっと見つめてロッタを目に焼き付けているみなさんの姿にも胸があつくなりました。
関わってくださったすべての皆様に感謝
20年って、長いような短いような。短いような長かったような。10年やろうと思って作ったロッタがまさかその倍続けられたなんて。わたしのがんばりではなく、足を運んでくださったすべてのお客様、どんな時もわたしの両手両足となって助けてくれたたくさんのスタッフたち、いろんなことを我慢してくれた家族のおかげです。
もっとこうやっとけばよかったなという後悔も、やり残したことも何ひとつもなく店を閉められたことをわたしもロッタも本当に幸せに思います。
カフェロッタはこれからのわたしの心の財産です♡
読んでくださってありがとー!
<撮影/林紘輝>
桜井かおり(さくらい・かおり)
文筆家。大手損害保険会社のOLを経て、東京・代官山「クリスマスカンパニー」にアルバイトとして勤務。その後、系列店のテディベア専門店「CUDDLYBROWN」で店長を務める。2001年3月、東京・松陰神社前で「カフェロッタ」をオープン。心のこもった接客に、全国からお客様が足を運び、お客様から相談やお手紙をもらうことも多かったそう。「カフェロッタ」は2021年9月末に建物老朽化のため、惜しまれつつ閉店。いまは、文筆業や、買い付けなどを行う。初の著書『カフェロッタのことと、わたしのこと』(旭屋出版)が好評発売中。
インスタグラム:@kaorilotta