• 「メリーゴーランド京都」は、子どもの本専門店。三重県・四日市市にある本店は1976(昭和51)年創業。京都店オープン以来、店長を務める鈴木潤さんは四日市市出身、メリーゴーランドで本と出会ってきました。京都店があるのは街の真ん中、四条河原町。場所柄、大人に読んでほしい、そんな本もセレクトしています。天然生活2月号「新しい暮らしの楽しみ」特集にも登場してくださった、鈴木さんにお話をうかがいました。

    子どもの本は心の中にずっとある

    画像: 寿ビルディングの最上階にあるメリーゴーランド京都

    寿ビルディングの最上階にあるメリーゴーランド京都

    メリーゴーランド京都店があるのは京都・四条河原町、クラシックな寿ビルディング。天井まである棚にぎっしりと本。売れ筋や流行に左右されず、読んでよかったもの、読み継いでいきたいものを、1冊1冊選んでいます。

    店長の鈴木潤さんは、三重県四日市市で生まれ育ち、長らく本店で働いていました。京都店を立ち上げからまかされ、はじめは知り合いもほとんどいない中、ほぼひとりで切り盛り。その後、結婚し、子ども2人を育て、いまやすっかり京都に根ざしています。

    私は姪っ子や友だちの子どもたちへのプレゼント選びはたいていメリーゴーランドでしています。子どものものを選ぶとき、好みやサイズを合わせるのがむずかしい、だけど本なら、親子で一緒に楽しんでもらえるから。大人になって読んで、あらためて気づくこともたくさん。本はだから、おもしろい。

    「子どものときに読んだ本は、心の中に残っている。ずーっと忘れていても、ちゃんと、種がまかれていて、いつか花を咲かせます」

    京都店がオープンしてまもなく、鈴木さんにはじめて取材したとき、そんなふうに話してくれました。心の中に、自分の世界をつくる。本は、その手助けをしてくれます。

    画像: 棚の色を決めたのも、店長の鈴木潤さん

    棚の色を決めたのも、店長の鈴木潤さん

    この時間、この場所で、出会えるものがある

    メリーゴーランド京都はギャラリーを併設しています。

    ここでの展覧会は、絵本作家のみならず、木工家や革職人、服づくりする人など、さまざま。みんな、鈴木さんが「会いたい、もっと知りたい」と思う人です。

    「絵本を扱っているから、絵本の原画展をするのでは、おもしろくないなって。人にはいろんな面があるから、絵本ではこんな絵だけど、ふだんはこんな作品をつくっているんだよって、そういうのを見てほしい。作家のまた違う世界が見える展覧会がしたいと思うんです」

    コロナ禍、なかなか行き来ができなくなり、どのお店もそうだったように、メリーゴーランドも窮地に立たされました。

    2020年春に予定していた、絵本作家・荒井良二さんの個展もやむなく取りやめに。荒井さんは店を思い、「なんでもやるよ」と、声をかけてくださったそう。そうして個展に代えて、オンラインで作品を展示販売することとなり、それが、オンラインショップを立ち上げるきっかけになりました。

    「私たちはずっと、オンラインショップには消極的だったんです。本をオンライン販売すると送料をいただくことになるし、お客様にとっても店にとっても見合わないから。

    だけど、作品なら、やる意味があるのかなと考えました。絵を買ってくださった方の中には、もちろん荒井さんのファンもいらっしゃったけれど、店を応援したい気持ちで買ってくださった方もあって、嬉しかったです。

    ただモノを売るというよりも、一歩、入り込めた感じがしたというか。お店に来て買い物するように、選んでいただけたのかなって」

    画像: 靴下や文具など、雑貨もセレクト

    靴下や文具など、雑貨もセレクト

    そうして、作品やサイン本のオンラインショップ、トークショーのオンライン配信などもおこなうようになりました。

    「だけど、いまだにオンラインがいいのかどうかは、わからないです。子どもさんがいて参加できない方、遠方にお住いの方にとって、オンライン配信できたことはすごくよかったと思います。

    いつでもどこでも見られるって、とても魅力的なこと。だけど、制限された中で、この時間、この場所でしか見られないものを受け取ることで、生まれる気持ちも、絶対にある。直に人に会って、同じ時間を共有するって、やっぱりかけがえのないもの。

    オンラインでは、そこに限界があると思うんです。コロナ禍で2年過ごして、その違いを強く感じるようになりました。オンラインはダメ、ということではなくて、慣れてしまわないように。選択肢が増えたと考えて、うまく付き合っていけたらと思います」

    画像: 鈴木潤さんの著書『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)、『物語を売る小さな本屋の物語』(晶文社)。『物語を売る小さな本屋の物語』にて、撮影を担当した写真家の植本一子さんとメリーゴーランドHPにて「あーだこーだ日記」を連載。2022年、メリーゴーランドで個展予定

    鈴木潤さんの著書『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)、『物語を売る小さな本屋の物語』(晶文社)。『物語を売る小さな本屋の物語』にて、撮影を担当した写真家の植本一子さんとメリーゴーランドHPにて「あーだこーだ日記」を連載。2022年、メリーゴーランドで個展予定

    今年のメリーゴーランドはどんなふう? と聞くと、「この夏、15周年を迎えるんやに」と、鈴木さん。

    ときどき鈴木さんの言葉にまじる、「やに」は四日市市の方言。聞けると、なんだか嬉しくなります。10周年には、谷川俊太郎さんと江國香織さんのトークショーを叶えていましたっけ。さて、どんな15周年になるのでしょうか。

    後編では、新しい年におすすめの本をご紹介いただきます!

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

    メリーゴーランド京都
    TEL 075-352-5408
    京都府京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2
    寿ビルディング5F
    10:00〜18:00 木曜休

    HP:https://www.mgr-kyoto2007.com/
    インスタグラム:@junneko333


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife



    This article is a sponsored article by
    ''.