• 「メリーゴーランド京都」店長の鈴木潤さんは、本の世界へ誘ってくれる案内人。子どもの本専門店だけれど、四条河原町という場所柄、大人に読んでほしい本もセレクトしています。天然生活2月号では、「新しい暮らしの楽しみ」を紹介してくれた鈴木さんに、新しい年のはじまりにおすすめの本を紹介してもらいました。

    おすすめの本から、世界が広がる

    メリーゴーランド京都を訪れたら、ぜひおすすめの本を聞いてみてください。

    たとえば、「新しいことをはじめてみたい」「気分を変えたい」「家族と離れて暮らすことになってさみしい」とか……なんでもいいから、いまの気持ちを話せば、きっと手がかりにして、本を紹介してくれます。

    いつも読んでいる本と、また違った視点で、本と出会えて楽しい。これぞ、専門店の醍醐味です。

    新しい年にちなみ、気持ちも新たに、なにかはじめたくなるような、そんな本を店長の鈴木潤さんに選んでもらいました。

    地球はどんなところか、おしえるとしたら

    画像: 地球はどんなところか、おしえるとしたら

    『地球のことをおしえてあげる』作・絵/ソフィー・ブラッコール 訳/横山和江 (鈴木出版)

    宇宙から来る、だれかさんに、地球のことをおしえてあげる。地球のことを知らないだれかに話すとしたら、自分だったらどんなふうに伝えるだろう? そんな、問いかけにもつながる、絵本です。

    「地球がどんな星かも、人間のことも知らない。地球に来たことのない人に紹介するという視点で描かれていきます。人間は、目の色も、髪の色も、ひとりひとり違う。目が見えない人たちはどうやって本を読むのだろう……

    私たちにとってあたりまえになっていることが、ひとつひとつ紹介されて、その視点にハッとします。人間は地球に生まれて、生きている。それは奇跡のようなこと。読む人の年齢によってもきっと、感じることがそれぞれにある。絵も素晴らしい本です」

    暮らしのつづきに、冒険がある

    画像: 暮らしのつづきに、冒険がある

    『雪に生きる』著/猪谷六合雄(カノア)

    近代スキーの草分け的存在、猪谷六合雄による、昭和18(1943)年の名著の復刻版。著者の半生を綴った、生活記録です。

    「猪谷六合雄さんは、とても自由な冒険家。好奇心の赴くまま、ひょいひょいと雪山へ。奥さんともいっしょに出かけたり、スキーに耐え得るように自分で靴下を編んだり……、暮らしが感じられる。スペクタクルな冒険というより、暮らしの中の延長に、冒険があるんです。

    冒険ものって男の人が読むイメージがありますが、この本はだから、読んでいてすごく面白いです」

    こんなふうに歳を重ねていきたい

    画像: こんなふうに歳を重ねていきたい

    『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』著/アーシュラ・K・ル=グウェイン 訳/谷垣暁美(河出書房新社)

    「ゲド戦記」の著者による、生前最後のエッセイ。ファンタジーの法則、ホメロス論から、愛猫、朝食の半熟卵まで、機知に富んだ力強い文章に、生き方が表れています。

    「タイトルからしてしびれる、晩年のエッセイです。ル=グウェインは、ものすごく聡明で、好奇心にあふれている。

    「ゲド戦記」からも伝わりますが、芯の強い人です。常に自分の思考を見つめている。エッセイの中には読者からの手紙に答えるものもあって、思考することをやめなかったのだなって思います。こんなふうに歳を重ねたいです」

    詩のような、歌のような、絵本みたいな

    画像: 詩のような、歌のような、絵本みたいな

    『ワイズ・ブラウンの詩の絵本』詩/マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵/レナード・ワイスガード 訳/木坂涼(フレーベル館)

    ワイズ・ブラウンの詩を、レナード・ワイスガードの絵とともに。小さな虫や草花、動物に目を向けた、絵本のような本です。

    「いろんな生き物が出てくる、詩のような、歌のような、絵本みたいな一冊。子どもから大人まで、絵を見ているだけでも、楽しめます。マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイスガードは、内田也哉子訳による絵本『たいせつなこと』のコンビ。とても美しくて、詩と物語の境目ってないのだと思います」

    さて、さっそく私は姪っ子へのプレゼントに、「地球のことをおしえてあげる」を選びました。絵を描くのが好きな彼女が、宇宙からやってくるだれかに、どんなふうに地球のことを教えるかな、それが知りたかったからです。

    画像: メリーゴーランド京都店長の鈴木潤さん。後ろにあるりんごの絵は、鈴木さんの著書『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』の表紙になった、西淑さんの原画です

    メリーゴーランド京都店長の鈴木潤さん。後ろにあるりんごの絵は、鈴木さんの著書『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』の表紙になった、西淑さんの原画です

    鈴木潤さんの著書『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(アノニマ・スタジオ)は、暮らしの中で感じたことから、絵本を紹介していくエッセイ。この本を読むと、絵本は夢物語でなく、日常と、自分とつながっているのだなと思います。『物語を売る小さな本屋の物語』(晶文社)は、鈴木さんがどうして本屋さんになったか、これまでの足取りをたどっていくのですが、まるで冒険物語のよう。どちらも新しい年におすすめです。

    本屋さんで、本を選ぶ楽しさ。ぜひメリーゴーランド京都で、実感してください。

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    メリーゴーランド京都
    TEL 075-352-5408
    京都府京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2
    寿ビルディング5F
    10:00〜18:00 木曜休

    HP:https://www.mgr-kyoto2007.com/
    インスタグラム:@junneko333


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife



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