日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
4月5日 4時20分
二十四節気・清明(せいめい)
万物が清らかで生き生きとしてくるころ
清明とは、すべてのものが清らかで生き生きとした状態を表す「清浄明潔」の言葉を略したもの。
東の風が吹き始め、空気がさわやかで木々が力強く、葉を広げ始めるころを表しています。
清明の期間の七十二候
4月5日から4月9日ごろ
清明初候・ 玄鳥至[つばめきたる]
「玄鳥」とはツバメのこと。
ツバメは、遠くオーストラリアやフィリピンなど南の国から渡ってきます。
海面すれすれの低空飛行で、その飛行距離は数千キロだとも。
そして、一度軒下に巣をつくったら、次の年も同じ民家の軒下に戻ってくる習性があるのだそうです。
商売繁盛や子孫繁栄のしるしとされているので、もし見かけたら、ひなが巣立つまで大事に見守りたいものです。
4月10日から4月14日ごろ
清明次候・ 鴻雁北[こうがんかえる]
「鴻雁」の“鴻(おおとり)”は、大きな水鳥のこと。
「雁」は、子育てをするために、繁殖地の北方へ旅立つ冬鳥の総称です。
「旅立つ雁」「雁などの連ねたるが」など、雁は昔から随筆や小説にもたびたび登場し、古くから人々になじみの深い鳥でした。
夕暮れ時にふと空を見上げると、雁の群れが列になって飛んでいくのを見かけたことはありませんか。
南の国から渡ってくるツバメと入れ替わりに、そろそろ雁が北の国へ帰っていくころです。
4月15日から4月19日ごろ
清明末候・ 虹始見[にじはじめてあらわる]
にわか雨のあとの美しい虹。
空にかかる虹は、地球の至るところで目にすることができ、老若男女、貧富や人種の差別なく、見上げれば心を解放できる美しくやさしい光景です。
突然に降り出し、ほどなくやんでしまうにわか雨は、田の神からの恵みの雨。
のちに現れる虹は「吉兆」のしるしでもありました。
さて、その色の認識は、江戸時代は赤、青、黄色の3色だったのだそう。
7色とされたのは明治時代からで、現代は12色にも分類できるのだとか。
いつの時代も虹は、大空に、無限に夢を広げられる希望の橋ですね。
* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2022年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。