(『天然生活』2016年9月号掲載)
本が教えてくれた、飾らない料理のこと
いわゆる “脱サラ” です。「アンチヘブリンガン」店主の大久保紀一郎さんは、24年間、勤めた会社を退職し、料理の世界へ足を踏み入れました。
「飲み食いが何より好きで、自分だけの店を持つことに憧れていました。会社で働きつつタイミングを見計らっていたんです」
お店を始める際、大きな影響を受けたという一冊が、玉村豊男さんの『料理の四面体』です。
「初めは、珍しい食材を探しに出かけたり、凝った料理をつくろうとしたり。頭でっかちになっていたのかもしれない。でも、この本を読んだときに、ストンと腑に落ちたんです。肩肘張らず、普通の食材で、普通の料理を提供すればいいだけのことじゃないかと」
さて、大久保さんがそんな読書のお供に食べたいというカレーは、スパイスをふんだんに使った一皿。
「全部なくてもいいんですけれどね。ひとつ入れるごとに味に深みが出るし、香りもよくなるから」
カウンターに並んだ薬瓶に入れたスパイスのひとつを手に取り、香りを確認してから鍋に加えます。
気軽な食材でつくるシンプルなカレー。けれども、スパイスが効いて実に奥深い。それは、大久保さんの人柄や店そのものを表しているようにもみえました。
「アンチヘブリンガン」店主・大久保紀一郎さん
とりむね肉とズッキーニのカレーのつくり方
玉ねぎ、トマト、ナッツ、スパイスをすりつぶして、とろみづけ。ココナッツミルクのコクがありながら、スパイスが効いたひと皿。
材料(1人分)
● とりむね肉 | 200g |
● ズッキーニ | 小1本 |
● 玉ねぎ | 1個 |
● にんにく、しょうが(ともにみじん切り) | 各少々 |
● トマト | 100g |
● ココナッツミルク | 大さじ3 |
● カシューナッツ | 30g |
● 水 | 3L |
● 塩 | 適量 |
● A | |
・クミンシード(ホール) | 30粒 |
・コリアンダーシード(ホール) | 10粒 |
・マスタードシード(ホール) | 20粒 |
・フェヌグリーク(ホール) | 10粒 |
・黒こしょう(ホール) | 5粒 |
● B | |
・クミンパウダー | 大さじ1 |
・コリアンダーパウダー | 大さじ1 |
・カルダモンパウダー、シナモンパウダー、クローブパウダー、ナツメグパウダー | 各小さじ1 |
● C | |
・カルダモン(ホール) | 3粒 |
・カルダモンパウダー | 小さじ1 |
・カイエンヌペッパー(ホール) | 1本 |
・カイエンヌペッパー(パウダー) | 小さじ1 |
・ターメリック | 小さじ1 |
・ローリエ | 2枚 |
● バジル | 3枚 |
● ごはん | 適量 |
● ひまわり油 | 適量 |
つくり方
1 とり肉、ズッキーニ、トマトは小さめの角切り、玉ねぎはみじん切りにする。
2 鍋に油とにんにく、しょうが、玉ねぎを入れて炒める。Aを加えて炒め、香りが出たらBを加えて炒める。
3 トマトを加え、油が浮いてきたら、ココナッツミルク、カシューナッツ、水を加える。煮立ったら、ハンドミキサーでなめらかに攪拌し、塩で味をととのえる。
4 Cととり肉を加えて10分ほど煮たら、ズッキーニを加える。ズッキーニに火がとおったらバジルを加え、器に、ごはんとともに盛る。
* * *
〈写真/砂原 文 構成・文/結城 歩〉
大久保紀一郎(おおくぼ・きいちろう)
アパレル会社で勤務したのち、東京・水道橋にある食堂「アンチヘブリンガン」をオープンさせる。
東京都千代田区猿楽町2-7-11 ハマダビルヂング2F
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです