新しいわたしの居場所
春、大きな楽しみを手に入れました。それは、金沢の住まい兼アトリエです。
経緯は、本にも書いたのですが、20年居場所であった店が老朽化によって取り壊され、わたしの“居場所”を失ったこと。
それを友人にぽろっとこぼしたら「かおりさんアトリエをもてば?」って。
そして金沢を選んだ理由は金沢に暮らす長男から「金沢、家賃安くていいよ。物件は金沢で探せば?」となったから。
往復の新幹線代を足しても都内より部屋は広くて安かったのです。
金沢に決めた一番の決め手とは?
でも金沢に決めた理由はそれだけではない。東京と金沢での二拠点生活を想像したらワクワクしたから。これが一番の決め手でした。
当然夫は反対するだろうなと思っていたら「これからは、かおちゃんは(夫はわたしをこう呼ぶ)ワクワクすることをしたらいいと思うよ。今まで頑張ってきたんだから」とまさかの背中を押してくれたのです。
うっ、うっ、泣ける。これは、迷うことはないですよねー
ただし、夫はこう付け加えました。「でも僕はお金は出さないよ! 自分でやれる範囲で」と。
夫の言葉は、冷たいのではなくて逆に気持ちは楽だし全責任はわたしにあるぞ、って思いました。
とは言ったものの、20年ぶりの物件の契約。
契約時の諸々の支払い、保険加入、最小限の家具や生活必需品の購入など計算外のお金が羽が生えたように出て行く。
そしておいしいものだらけの金沢ですもん、行けばおいしいものを食べちゃう。おいしいお酒も飲んじゃう。
だんだんと「わたし……家賃を払っていけるのだろうか?」と不安になってきました。
気づくと「更新までは意地でも借り続けるわ」が口癖に。
アトリエの家具を買う時も「いつか東京に引き上げた時に置く場所はあるかなー?」って考えちゃって。
ある時、ハッ!としました。何言っちゃってんの、わたし。
まだ始まってもないのに終わりを自分で決めちゃってる、って。
先を考えるより、まず動く
お金が不安なの? ならば、お金を得る方法を考えればいい。もっと仕事をすればいいのです。何なら金沢でも。
それでも苦しくなったら、その時はしがみつかず手放せばいい。
そう、その時考えればいいのよね。わたしのモットーは「何事もどうせやるなら楽しもう」だもん。
不安が吹っ切れて最初にやったのが壁のペンキ塗り。古い物件で大家さんからは好きにしていいですよと言われています。
そしていま企んでいるのがカフェロッタのように壁の1箇所にウィリアム・モリスの壁紙を貼ろうかな? と。
そして、そしてアトリエが整い次第、素敵なイベントができたらいいな、と企画中。
そうよ、楽しみは見つけるもの。
どうせやるなら何事も真剣に楽しもうじゃないですか! ねっ。
金沢の話は、まだ始まったばかり。
つ・づ・く。
読んでくださってありがとー!
桜井かおり(さくらい・かおり)
文筆家。大手損害保険会社のOLを経て、東京・代官山「クリスマスカンパニー」にアルバイトとして勤務。その後、系列店のテディベア専門店「CUDDLYBROWN」で店長を務める。2001年3月、東京・松陰神社前で「カフェロッタ」をオープン。心のこもった接客に、全国からお客様が足を運び、お客様から相談やお手紙をもらうことも多かったそう。「カフェロッタ」は2021年9月末に建物老朽化のため、惜しまれつつ閉店。いまは、文筆業や、買い付けなどを行う。著書に『カフェロッタのことと、わたしのこと』(旭屋出版)がある。2冊目の著書『愛してやまないカフェロッタのことと、わたしのこと』(旭屋出版)が発売になったばかり。
インスタグラム:@kaorilotta
* * *