(『天然生活』2020年12月号掲載)
食養生で体を温め、血の滞りを改善
「与えられた命を生かし、自分らしく輝いて生きるために役立つのが、食養生です」
そう語るのは、国際中医薬膳師の資格ももつ野菜料理研究家の小鮒ちふみさんです。
25歳のときに患った胃がんのため胃の3分の2を切除、おなかのリンパ節も取っているため、冷えやすく、むくみやすいそう。そうした弱い部分を補うためもあり、食を大切にした暮らしを送っています。
「活動的に過ごすことの多い春夏は、心と体も外に向かいますが、秋冬は内に向く季節。秋に収穫した食物を冬に貯蔵するように、エネルギーもためておく時季のため、食養生しやすいと思います」
とくに、寒さやストレスから体が冷え、足先やかかとを触ったときに冷たかったり、おなかがスースーする人は、体を温める食養生をしてほしい、とのこと。
しょうがやスパイスなどの温め食材を利用するほか、火の入れ方や食べ方なども教えてくれました。
「体が冷えていると、血のめぐりが悪くなり、全身の不調につながります。また薬膳では体と心は別々のものではなく、同じものと考えるため、気のめぐりも悪くなり、鬱々としたり、落ち込んだり。食養生を通じて体を温め、血の滞りを改善することで、心もほかほか、すっきりしてくるはずです」
冬によい食べ方を
じっくり煮込んだものを、朝昼しっかり、夜は軽めに
寒さから体を守り、しっかり温めたい冬は、生ものを避け、加熱したものを摂りましょう。よく煮込んだ汁ものやスープなら、水溶性の栄養も丸ごといただけます。
夜ごはんは食べすぎずに空っぽに近い状態の胃で寝るようにすると、内臓もゆっくり休め、熟睡できます。体もよく温まり、心身ともに元気の土台が整ってくるはず。
エネルギーをためたい季節なので、発散するもの、たとえば辛いものやお酒は摂りすぎに注意を。味の濃いものや脂っぽいものも、消化の負担になります。
しょうがを生かす
ぞくぞくした寒気には生で、芯の冷えには、加熱か乾燥を
温め食材の定番「しょうが」は、冷えの種類によって使い分けを。体の表面がぞくぞくするようなときは、生のしょうがをいただきます。小さじ1〜2杯分をすりおろし、梅醤番茶や味噌汁に加えると手軽に摂れます。
体の芯が冷え切り、靴下をはいているのに足が冷たかったり、厚着をしているのにおなかや背中が寒いと感じたりするようなときは、市販のしょうがパウダーがおすすめです。耳かき1杯~小さじくらいを紅茶に入れたり、あんかけ料理に使ったりすると、じわっと汗をかいてきます。
赤と黒の食材で貧血改善
にんじんや黒豆で健康な血液に。血行促進、冷えの改善も
全身をめぐる血液がその人にとって必要な質、量を満たしていることで、血のめぐりがよくなり、冷えの解消につながります。
血の養生は女性の養生の要です。鉄分とミネラルの豊富な赤い食材と黒い食材を毎日の食事にぜひ取り入れてください。にんじん、ほうれんそう、ビーツ、皮つき落花生、黒豆、黒ごま、ひじきなどが手に入りやすいでしょう。
とくに黒豆はタンパク質もあり、血のバランスが整う優れた食材です。皮がはじけるまで炒り、マグカップに5~10粒くらい入れれば黒豆茶に。豆もおいしくいただけます。
滋養のある食材で冬ごもり
骨つき肉や豆など、命の源がつまった食材を
動植物が滋養をつけて冬眠に入るように、私たち人間にとっても、冬は滋養をつけるのにふさわしい季節です。
冬の寒さを乗り切り、春から活動できるように、良質なタンパク質を含む栄養価の高い食べ物を食べて、エネルギーを高めていきましょう。
とくにおすすめなのは、骨つき肉です。骨には髄液といって血液をつくる元が含まれています。加熱するとこの髄液が染み出してくるので、スープなどでいただくといいでしょう。
お肉を食べない人は、豆類やきのこ類が、体に必要なエネルギーを補ってくれます。
ハーブの力で体のめぐりをよくする
柑橘類やスパイス、ハーブ、香りのよい食材を活用して
寒さで縮こまる冬の体は、血も気も、滞りがち。香りの力を借り、めぐりのよい体をめざしましょう。
おすすめは、ゆずです。黄色いゆずは胃腸の不調、青いゆずは精神的なストレスからくる滞りに働きます。果皮に香り成分が多く含まれるので、皮をすりおろして料理に使うほか、ゆず茶をいただいても。
しそやバジル、よもぎ、フェンネルやシナモンといったハーブやスパイスもめぐりをよくしてくれます。香りを楽しむことが大切なので、好きな香りの食材を使ってください。
〈監修/小鮒ちふみ 取材・文/長谷川未緒 イラスト/はしもとゆか〉
小鮒ちふみ(こぶな・ちふみ)
野菜料理研究家、台所養生共室主宰。国立北京中医日本校卒、国際中医薬膳師。小鮒農園の台所担当として農食一体を軸に、風土と私たちの命になじむ養生法を伝えている。
http://kobuna-farm.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです