(『天然生活』2019年10月号 別冊付録掲載)
新しい一日が始まるぞ、というスイッチ
「朝ごはんはうきうきしながらつくっています。朝は一日のなかで最も希望に満ちていて、食卓にぱーっと日が差す瞬間や、湯気がふわっと上がる風景も好きなんです」と、歌人の東直子さん。
夫は単身赴任中で、ふたりのお子さんも独立し、週末以外は、おひとり住まい。夜ごはんはひとり分をつくるのが億劫で外食することもあるそうですが、朝ごはんは欠かさずつくっています。
「新しい一日が始まるぞ、というスイッチみたいな感じですね」
ご主人の習慣でいただくようになったという果物を欠かさない東さんの朝ごはんは、ほぼ毎日、インスタグラム(インターネット上で写真を共有できるサービス)に投稿されています。
きっかけは、お米もパンもなく、じゃがいもを主食に朝食をつくったことでした。
「半年ほど前、今日の朝食はワイルド、と写真を投稿したところ、見た人が喜んでくれて。以来、遊び感覚で続けています」
品数の多さに驚かれたり、トーストのときに便利だよ、とココット皿をプレゼントされたりと、周囲からの反響も大きく、朝ごはんをつくる楽しみが増えたのだとか。
「写真を撮るために、ひとりだと適当になりがちな盛りつけをていねいにしたり、フルーツをきれいにカットしたりしています」
朝ごはんづくりは楽しいものの、やっぱり家族と一緒にいただきたい、と東さん。夫が単身赴任を終えて戻ってくる日を、いまから心待ちにしています。
おいしいパンがある日の洋朝食
●ハムチーズトースト ●ベーコンエッグ ●フルーツヨーグルト ●紅茶
半年ほど前に東京の下町・谷根千エリアに越してきたところ、近所においしいパン屋さんが多くあり、パンを朝ごはんに食べることが多くなったそう。
ハムとこげ目のつくチーズをのせたトーストと、ミニトマトとベーコンエッグのココット皿は、同時にトースターに入れて調理時間の短縮にも。
毎朝いただくフルーツはヨーグルトに加え、はちみつをたらし、食べられるお花を飾って。
動物のモチーフが好きで、この日はプレゼントでいただいたという鹿のカップでアールグレイティーを。
簡単玉子焼きとさけの和朝食
●ごはん ●紅ざけ ●花田くんの玉子焼き ●かぼちゃの煮もの ●菜の花の辛子あえ ●めかぶ ●漬物 ●きんかん
ごはんが主食のときは夜ごはんの残りをいただくことが多く、かぼちゃの煮ものと菜の花の辛子あえは前日の余り。
スーパーのものよりおいしい気がするという紅ざけは近所のお魚屋さんで。
息子さんが小学生のときに、友達の花田くんから教わった玉子焼きは、卵1個でつくる。一度に流してバターで焼くだけなので、小学生でもつくれる簡単さ。
きんかんは、宮崎を訪れ、おいしさに目覚めた。「甘くてみずみずしいです」
東さんの欠かせないもの
にわとりのココット皿
とりわけ鳥モチーフが好きな東さんに、ご友人からのプレゼント。
オーブントースターにトーストと一緒に入れられる大きさが便利で、愛用中。
〈撮影/元家健吾 取材・文/長谷川未緒〉
東直子(ひがし・なおこ)
歌人、作家。1996年、第7回歌壇賞受賞。2016年、小説『いとの森の家』(ポプラ社)で第31回坪田譲治文学賞受賞。歌集『春原さんのリコーダー』(筑摩書房)、歌書『短歌の時間』(春陽堂書店)、エッセイ集『一緒に生きる』(福音館書店)など著書多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです