(『天然生活』2020年11月号掲載)
うまくいかない時期を面白がる
リビングを見わたせるように机を配置し、目線の高さの棚でほどよく視界が区切られた空間。それが山本ふみこさんの仕事場です。
大きな仕事机は夫君のおばさまが長年洋裁に使っていたものを譲り受けたもの。
家族の気配をなんとなく感じて、たまにおしゃべりしながら仕事をするのが山本さんのスタイルです。
いまでこそ、自分らしいペースで仕事をこなす山本さんですが、幼い子を抱えてフリーランスとして独立したときは、時間の使い方も試行錯誤を繰り返していました。
「家事と仕事、同じ場所で最初からうまく両立できるなんて、考えないほうがいい。うまくいかなくて当然なのだから、罪悪感なんて感じなくていいんです。肩の力を抜いて、“うまくいかない時期を面白がる”のもいいのではないでしょうか」
そんなふうに山本さんはがんばりすぎてしまいがちな在宅ワーク初心者に、やさしく語りかけます。
そして、いたずらっ子のような瞳で「時間が足りない」ときのおまじないを教えてくれました。
「自分の脳に“この仕事は1時間で終わらせます”と宣言するの。そうすると、脳が“よし、1時間だな”って思って、ちゃーんとその時間で終わらせることができますよ。ぜひやってみてください」
楽しく働く環境づくりのヒント1
やることごとに風呂敷にまとめる
エッセイの執筆、武蔵野市教育委員会の仕事、エッセイ教室の講師。
いろいろな顔をもつ山本さんは、仕事の資料を「風呂敷」ごとにまとめて保管しています。
「風呂敷は荷物を包んだり、さっと膝にかけたり、いろいろな使いみちができる万能選手。すぐに増える紙の資料も、風呂敷でまとめておけば、さっと取り出せます」
楽しく働く環境づくりのヒント2
分類は自分にわかりやすく
ごちゃごちゃしがちな資料の分類。
やることリストは、クリアファイルやバインダーを使って仕分けして、内容がひと目でわかるようにラベルに記入。
「資料の出し入れが頻繁なクリアファイルは、貼ったりはがしたりがすぐにできる養生テープを使って、マジックで手書きしています」
“お返事を書きましょう。”というラベルの言葉に、山本さんらしい温かい心遣いが感じられます。
仕事机の後ろには壁一面の本棚。
その一角に、資料をまとめたファイルやバインダーが。ラベルを付けて収納している。
必要なときは振り返ってさっと取り出せるのも、仕事がやりやすくなるコツ。
楽しく働く環境づくりのヒント3
好きな文房具で楽しみを
仕事をする時間を楽しくしてくれるのが、お気に入りの文房具たち。
鉛筆が大好きという山本さんは、最後の最後まで使った“おちびちゃん”を大切にとってあります。
やわらかい描き味のダーマトグラフは、イラストを描くときに。
「好きなものを手にとるだけで心が弾むもの。仕事へのやる気にもつながっていると思います」
山本ふみこさんのオンオフのつくり方
小さな習慣で仕事への切り替えを
仕事前にお線香を1本立ててから、机に向かうのが山本さんの小さなルール。
「平塚らいてうのドキュメンタリーで彼女がそうしていたのを観て、それ以来、習慣にしています」
仕事に煮詰まったときは、ちょっと休憩をはさんで気持ちを整えて。
材料を入れるだけでできるスープメーカーは、気分転換にもぴったりです。
〈撮影/林紘輝 取材・文/工藤千秋〉
山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
随筆家。日常への温かいまなざしにあふれた文章で、暮らしの楽しさを綴る。「ふみ虫舎エッセイ通信講座」も主宰。インスタグラム:@y_fumimushi
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです