(『天然生活』2021年5月号掲載)
自分に甘く、ときどき贅沢に
「いまは思うように旅に行けないから、宿でいただくような朝ごはんがときどき食べたくなります」と語るのは東京・自由が丘で「白山米店」を営む寿松木衣映さんです。
小皿に盛られたおかずは、どれも旅の記憶に彩られたごちそう。家族で訪れた伊豆旅行でおいしさに目覚めた本わさび、鎌倉に行くたびに求めるしらす、新潟の田植えイベントで知った糸瓜の粕漬けなど、思い出話が尽きません。
「ふだんは前の晩の残りを食べて、冷蔵庫が片づいたらうれしいと思うほうだけれど、こういう朝ごはんをひとりでいただく時間はいいですよね。お酒も飲んだりして、1日ぐうたらできたら最高です」
以前は家族ばらばらの朝ごはんの用意に、座って食べる暇もなかったという寿松木さんですが、最近、変化がありました。夫が仕事を整理したことで時間に余裕ができ、朝ごはんを自分でつくってくれるようになったのだとか。
「夫の朝ごはんを気にしなくていいのは、楽ですね。結婚37年目にして、ようやくゆっくりできるようになりました。夫は日曜日はパンを食べる日で、私のレシピノートを基に、多めにスープをつくってくれるんです」
うま味たっぷりのオニオングラタンスープはお米にも合うそう。
「自分の分をつくってくれるだけでもうれしいのに、食べさせてもらえるなんて、感謝です」
あれもこれもちょっとずつ、旅館風の朝ごはん
●いわし煮 ごぼうと新しょうががけ ●ほうれんそうと焼きしいたけのあえもの ●れんこんのマヨネーズあえ ●春菊とナッツのごまあえ ●酢いかと菜の花の酢味噌あえ ●しらす ●とんぶりとアカモクのポン酢漬け ●玉子焼き ●スナップエンドウ ●本わさび ●漬物 ●あさりの味噌汁 ●ごはん ●さつまいもの小豆がけ
お気に入りの器に少しずつ盛りつけたおかずは、どれも旅の思い出がつまったもの。
「新婚旅行先の京都でいただいた味噌汁は、驚くほどたくさんあさりが入っていました。太った貝がたっぷりだと、気分が上がります。贅沢ですよね」
料理を始めた夫特製のオニオングラタンスープ
●オニオングラタンスープ ●おむすび(梅、ピリ辛れんこん) ●れんこん漬け ●ひたし豆 ●いかと玉ねぎのマリネ ●大根の酢漬け ●ミルクティー
玉ねぎの甘味をじっくり引き出したオニオングラタンスープをおむすびと。
問屋直売の東京・都立大学にある「鈴吉海苔店」ののりを巻いて。「手頃な価格のおいしいのりがあると、重宝します」。
スープは桜の木で自らつくったスプーンでいただきます。
幸せな朝ごはんのお供
英国の「タイフーティー」
ミルクティーが好きだという寿松木さんが愛飲するのは、イギリスに詳しい友人に教えてもらったブランドの紅茶。
濃いめに淹れ、八千代牛乳を注いでいただくのが、毎朝食後のお楽しみ。
〈撮影/有賀 傑 取材・文/長谷川未緒〉
寿松木衣映(すずき・きぬえ)
東京・自由が丘で「白山米店」を営業。第1、第2水曜は、おいしいごはんと、ごはんに合うおかずを楽しめるお弁当を販売。著書に『自由が丘3丁目 白山米店のやさしいごはん』(ミシマ社)。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです