(『天然生活』2021年5月号掲載)
「無駄な力を使わずに、最大限の効果を引き出す」を目指す
普通「体のトレーニング」というと、ストレッチをして柔軟性を高めたり、筋トレで筋肉に負荷をかけ、鍛えることなどを想像しますが、森田久美さんが目指しているのは「無駄な力を使わずに、最大限の効果を引き出す」というもの。
そのためには骨の動きを理解し、筋膜リリース(筋肉の周りを包んでいる膜をほぐし、すべりをよくすること。それによって、筋肉の柔軟性が増し、関節の可動域が広がる)をして、「こう動くと気持ちいい」「こう動くとラク」と、体の声に耳を傾けていくのがポイントとなります。
トレーニングだからといって、やみくもに負荷をかけ、苦痛に耐える必要はまったくなく、骨や筋肉の構造を理解すれば、日常の動作でも、自然と鍛えられるようになっていくとか。
いままでいろんなアプローチで体を学んできた森田さんですが、やればやるほど、だれにでも当てはまる「正解」はなく、また「こういうことができるようになれば達成」というような、目標を立てることにも意味を感じないようになっていったといいます。
「体の感覚は人それぞれ。『こうしなければ』という強迫観念にとらわれると続かないし、つまらない。ボディーワークを続けることによって、いままで縮こまって眠っていた筋肉や神経が目覚めて、体の可能性が広がっていく。それ自体が純粋に楽しいことなんです。
赤ちゃんが育って、少しずつ、いろんなことができるようになりますよね。年齢を重ねても、そんな『目覚めるチャンス』はずっと続くものだと思います」
森田久美さん 体すっきりの心がけ
全身の筋膜をリリースする
筋肉を包んでいる薄い膜・筋膜は、体全体を立体的に包み込み、組織を支えているため、「第二の骨格」とも呼ばれているそう。この筋膜が癒着してしまうと、筋肉がしなやかに動けず、血管や神経、リンパ管にも影響が生まれます。
森田さんはストレッチグッズ「トリガーポイント」を活用し、筋膜をリリース(=癒着を取り除く)することを日課にしています。日常の空いた時間にできるのもポイント。
1 脚を前に伸ばして座り、足首の下に「トリガーポイント」を置いて、膝裏までコロコロと転がすようにして、上下に動かしていく。
2 何度か往復させるだけで、適度に刺激が伝わり、脚がゆるんでいく。第二の心臓といわれるふくらはぎを刺激でき、血流もアップ。
3 首や頭、二の腕やわきの下なども順番に刺激していくと、パソコン疲れなどもすっきり。目の疲れなどもとれるのだそう。
森田久美さん 体すっきりの心がけ
瞑想前の呼吸調整
雑念を取り払う「心の掃除」として、1日1回の瞑想も習慣に。
そのときに「いい呼吸」ができていれば、短時間であっても効果は抜群。なので横隔膜が広々と動くよう、瞑想前には胸骨や鼻孔などをゆるめる前準備もセットにしているそう。
「体の感度を上げるためには、感覚をキャッチする心としっかりつながっていることが大切です。呼吸が深くなるほど、体と心のジョイントもうまくいくと思います」
体を知るためのおすすめ本とCD
体の進化と構造を知る本
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか』と『教育の基礎としての一般人間学』。体の部位や感覚の進化の過程を学びたい人に。
疲れにくい動きを知る本
『身体構造力』と『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』。体を整え、パフォーマンスを上げるためのヒントが満載。
藤井風さんの音楽
「心にも体にも、しなやかな柔軟性を感じます。自由度が高く、縛られていない感覚が心地よいです。エド・シーランも好きです」
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/田中のり子〉
森田久美(もりた・くみ)
京都・大徳寺そばで「料理教室森田」を主宰。2020年よりオンラインレッスンを開始し、お母さんクラス、身体クラスも開講。
インスタグラム:@0358morita
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです