(『おばあめし』より)
おかずに鮭の塩焼きがあるのは偶然……なわけない!
細かな“あられ”に刻みのり、赤い梅肉。全体はうっすらと緑っぽい。ひと口かじると少しふやけた“あられ”の食感に、ほどよい塩気がごはんに相まって、もう緑茶をすすりたくてたまらない!
ごはんに混ぜられているのは、そう、お茶漬けの素!
おかずに鮭の塩焼きがあるのは偶然……なわけない!「このおにぎりと鮭で、お茶漬けつくって食べや」と優しく語るおばあの顔が、天井辺りにぼんやり浮かんで見える。
そのとおりにしてみると、これはたまらない! おいしくて力がみなぎってくる。おばあ、ありがとう。天井に向かって感謝する。
だけど勘違いしてはいけない。おばあはまだ生きている。それなのに、なぜおばあの幻影がこうしてたまにあらわれるのか。そして、なぜ現実より優しげなのか未だに謎だ。
具材
・[おにぎり] お茶漬けの素
・[お茶漬け] 鮭の塩焼き、緑茶、ブロッコリー、刻みピーマン、ほうれん草
本記事は『おばあめし』(清流出版)からの抜粋です
大迫知信(おおさこ・とものぶ)
1984年、大阪府生まれ。フリーライター、京都芸術大学非常勤講師。大阪工業大学大学院修了、技術職として沖縄電力勤務。3年で退職し、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)に入学。生活費を浮かすために、実の祖母の手料理を食べ始める。大学卒業後はフリーライターとして、体当たり取材もいとわず、書籍のブックライターから紙媒体、Webまで幅広く活躍中。
インスタグラム:@obaameshi
ツイッター:@5643Tom
webサイト:https://obaameshi.com
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アラフォー独身男の孫に、料理をつくり続ける「おばあ」。「おばあちゃんの手料理」とは程遠い、奇抜でぶっ飛んだ料理に、孫のつっこみが炸裂! おばあと孫のオモロイ関係に、笑って、笑って、ちょっと泣ける、グルメ写真エッセイです。