• 82歳でもなお元気。朝から晩まで働く「梅おばあちゃん」こと、乗松祥子さん。梅に寄り添い、ささやかな発見を慈しみながら心豊かな日々を送っています。乗松さんに梅酢を使った夏バテ対策料理、「トマトのマリネサラダ」と「ピクルス」のつくり方を教えていただきました。
    (『梅おばあちゃんの贈りもの』より)

    梅酢さえあれば

    私の暮らしになくてはならないのが梅酢です。梅酢は梅を塩漬けにしたときに梅から出る液体のことです。

    最初に上がってくるのが白梅酢で、白梅酢に赤しそを漬け込んだものが赤梅酢。どちらもポリフェノールやクエン酸、リンゴ酸などの有機酸が豊富に含まれ、抗菌作用は梅干しより強いといわれています。

    白梅酢は料理に色をつけたくないときにも使え、シンプルな味わいと梅の香りが楽しめます。赤しその抗酸化作用と防腐作用が加わった赤梅酢は、夏場の食中毒予防には欠かせません。

    冷蔵庫のない時代、先人たちはこの天然調味料を防腐剤代わりに役立てていたそうです。

    古いほど味わいが増し、クエン酸が強いと濁ったり、下の方がドロッとしてきたりしますが、料理の隠し味やソース、おむすびの手塩に使うと格別です。

    私が元気なのは、栄養豊富な梅酢を塩代わりに使っているからかもしれません。

    梅酢を使った夏バテ対策料理

    繁忙期はつくりおきで乗り切る

    画像: 繁忙期はつくりおきで乗り切る

    梅仕事が忙しい夏は、冷蔵庫の中の常備菜に助けられています。

    定番は夏野菜を使ったピクルスとトマトのマリネサラダです。

    ピクルスは幼い頃、母と一緒につくりながら覚えた故郷の味です。母はらっきょうの酢漬けと同じ感覚でつくっていたようですが、今思えば、かなりモダンな料理ですよね。

    トマトのマリネサラダは30年ほど前からつくっていますが、和食にオリーブオイルを使うことが当時の私には大改革でした。不思議なことに、梅酢とオリーブオイルを混ぜたドレッシングを使うと、昔のトマトのような濃厚な味わいがよみがえります。

    また、赤梅酢に含まれるアントシアニンには抗酸化作用があるので、紫外線が気になる季節にはいいようです。

    食欲が減退しがちな夏こそ、梅酢のすっきりとした酸味をお役立てください。

    トマトのマリネサラダのつくり方

    画像: トマトのマリネサラダのつくり方

    材料(つくりやすい分量)

    ● トマト2個
    ● プチトマト150g
    ● 赤玉ねぎ2個
    ● A
    ・オリーブオイル150mL
    ・梅酢(赤でも白でもよい)70〜100mL
    ・濃口しょうゆ大さじ1
    ・塩少々
    ・粗びき黒こしょう少々
    ● イタリアンパセリ適量
    ● バジル適量

    つくり方

     トマトは湯むきして厚さ1cmに切る。プチトマトは湯むきする。赤玉ねぎは薄切りにする。

     Aにトマトを切ったときの汁を加えて混ぜ、つけ汁をつくる。

     容器にトマト、プチトマト、赤玉ねぎ、つけ汁を入れて、冷蔵庫で2〜3時間冷やす。

     器に盛り、イタリアンパセリとバジルを散らす。

    さっぱりピクルスのつくり方

    画像: さっぱりピクルスのつくり方

    材料(好みの分量)

    ● セロリ、にんじん、きゅうり、みょうが各適量
    *好きな野菜でよい。
    ● A
    水4:梅酢2:純米酢2:みりん2の割合で各適量
    *梅酢は赤でも白でもよい。

    つくり方

     野菜は食べやすい大きさに切る。

     水8:梅酢2(ともに分量外)の割合で下ゆで用の梅酢液をつくる。梅酢液を鍋に入れ、沸騰させる。

     火が通りにくい野菜からさっとくぐらせ、粗熱をとり、煮沸消毒した瓶に入れる。

     Aを混ぜ、野菜がかぶるくらいのつけ汁をつくる。つけ汁を鍋に入れ、ひと煮立ちさせ、粗熱がとれたらの瓶に入れ、冷蔵庫に入れて2日おく。

     2日後につけ汁だけを取り出す。つけ汁を鍋に入れ、2〜3分沸騰させ、アクを取る。瓶の中の野菜を味見し、味が薄かったら、Aの調味料各適量を鍋に加えて煮る。粗熱がとれたらつけ汁を瓶に戻す。その日から食べられる。


    本記事は『梅おばあちゃんの贈りもの』(誠文堂新光社)からの抜粋です


    画像: つくり方

    乗松祥子(のりまつ・さちこ)

    1940(昭和15)年愛媛県生まれ。茶懐石料理店「辻留」銀座店に20余年勤務したのち、鎌倉・小町通りの日本料理店「味路喜」の責任者を務める。その後、代官山に日本料理店「延楽」を開店。現在は杉田梅専門店「延楽梅花堂」を経営している。「辻留」時代に100余年前の梅干しを譲り受けたことがきっかけで、梅仕事を始める。「幻の梅」といわれる野梅系の杉田梅に出合い、梅に一生を捧げることを誓う。現在まで50年以上に渡って梅仕事を続けている。杉田梅を未来につなげるために、「杉田梅を守り育てる会」の主幹を務め、自身でも梅の木の保全活動や植樹などを行っている。最新著書『梅おばあちゃんの贈りもの』(誠文堂新光社)が発売中。

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    82歳でもなお元気。朝から晩まで働く梅おばあちゃんこと、乗松祥子さん。梅に寄り添い、ささやかな発見を慈しみながら、心豊かな日々を送っています。乗松さんの春夏秋冬の梅仕事を追いながら、毎日の食事から、梅の健康効果、幻と言われた杉田梅のこと、好奇心の持ち方、大切にしていること、白洲正子さん、樹木希林さんらとの交流などについて綴った本ができました。

    秘伝の梅干し、梅肉エキス、梅酒、梅ジュース、梅ジャムの作り方をはじめ、梅酢を使った料理レシピも掲載しています。家族ぐるみで付き合いのあった文筆家・内田也哉子さんとの対談も収録。梅仕事に興味がある方はもちろん、日々の暮らしを大切にしたい方、これからの人生のヒントがほしい方にもおすすめの一冊です。



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