• 「健康でありたい」と願う人は多いのではないでしょうか。在宅栄養専門管理栄養士の塩野﨑淳子さんは「健康ブームの影響もあり、食べ物を体に良い・悪いと白黒つけて食物選択の範囲を狭めていることで、かえって健康を害するのではないかと危機感を感じている」といいます。大切なのは、良さだけでなくきちんと知識をつけること。お酒の大誤解についてご紹介します。

    お酒を飲むならワインがいい?

    抗酸化物質のポリフェノール効果

    「ワインは体に良いらしい」というニュースは、1990年代後半頃からメディアで取り上げられるようになり、「アルコールを飲むときは、健康のためにワインにしている」という方もいらっしゃるでしょう。

    ワインと言えば、抗酸化物質のポリフェノールの含有量が高いことが有名ですが、ポリフェノールにはLDLコレステロールの酸化を防ぐことで動脈硬化を予防する効果があると言われています。

    ポリフェノールは植物の色素や苦みなどの成分で、さまざまな植物に含まれている機能性成分です。

    「ワインをよく飲んでいるフランス人は動物性の脂質の摂取量が多く、喫煙者も多いのに心疾患による死亡率が低い」という状況が「フレンチ・パラドックス」と呼ばれ、フランス人が好んで飲むワインに含まれるポリフェノールの効果ではないかと言われています。

    しかし、お酒が大好きな管理栄養士として抱くのは、「お酒を飲むときに一緒に食べているものの影響はないのだろうか」という素朴な疑問です。

    私はクラフトビール(いわゆる地ビール)が好きですが、米どころの東北にはおいしい日本酒もたくさんあります。宮城県には一ノ蔵や浦霞、日高見、伯楽星などなど、数多くの銘柄がありますが、きりっと冷やした辛口純米酒にチーズバーガーを合わせる人はまずいないでしょう。

    三陸の海の幸や、旬の野菜の浅漬けなどがほしくなります。気仙沼で水揚げされたカツオの刺し身と、気仙沼港にある日本酒の蔵元「男山本店」の蒼天伝の組み合わせは最高です。

    画像: 抗酸化物質のポリフェノール効果

    ワインの場合、チーズや生ハム、サラダやドライフルーツなどを合わせたくなりますよね。

    日本では、唐揚げなどのこってりした揚げ物をビールでゴクゴクと流し込むイメージが強く、ビールメーカー各社のCMを見ても、そういった演出をしているものが多いです。

    飲み方も、ビアガーデンでは大きなジョッキを一気に飲み干すような人が多いですが、ワインバーではワインを一気に飲む人はほとんどいません。時間をかけながら、ひと口ひと口をゆっくりと味わう飲み方が一般的です。

    かくいう私は、ビアガーデンが大好きで、グビグビ飲みの方です。

    ワイン派がスーパーでよく買うもの

    お酒と一緒に食べるものの特徴によって、健康にも不健康にもなりうるのではないか?という私の素朴な疑問に答えてくれた本があります。

    佐々木敏先生の『佐々木敏の栄養データはこう読む!』(女子栄養大学出版部)です。「ワインで健康は手に入る?」というテーマで、ワインの健康効果をさまざまな角度から検証しています。

    なかでも印象的だったのは、デンマークで行われたスーパーマーケットのレシート(300万件以上!)を分析した調査について解説されています。レシートを分析した結果、ビールと一緒によく買われた食品と、ワインと一緒によく買われた食品が明らかになったのです。

    ビールと一緒によく買われていたのはソーセージ、マーガリン・バター、豚肉、ポテトチップスなどでしたが、ワインの場合は低脂肪チーズや野菜・果物、植物油などでした。

    ワインそのものというより、
    「ワインに合うおつまみ」がヘルシーな可能性も

    ワイン派の人々が「心筋梗塞に予防的な食品」を選んでいたのです。対して、ビールとソーセージの組み合わせ。

    ビール好きとしては「やっぱりそうかあぁ!」と激しくうなずいてしまいました。

    そして、同書では結論として、「飲むお酒の種類によって健康に差がでるわけではありません」と締めくくっています。

    もし、「ワインの健康効果」を調べるなら、なるべく同じ年齢や活動量の人を集めて、全員に同じ食生活をしてもらい、飲むアルコールの量は同じにして、もちろんお酒の肴を同じものにして、ワイン、日本酒、ビール、焼酎などお酒の種類を変えて経過を見れば、種類による違いがわかるかもしれません。

    しかし、どんなお酒にも合う肴って何でしょうね。

    <イラスト/平澤 南>

    本記事は『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)からの抜粋です。

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    塩野﨑 淳子(しおのざき・じゅんこ)

    管理栄養士・在宅栄養専門管理栄養士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。1978年大阪府生まれ。2001年女子栄養大学栄養学部卒。宮城県仙台市在住。

    長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションのケアマネジャーとして在宅療養者の支援を行う。現在は機能強化型認定栄養ケア・ステーション訪問栄養サポートセンター仙台(医療法人豊生会むらた日帰り外科手術クリニック内)で、在宅栄養専門管理栄養士として活動。一般社団法人日本在宅栄養管理学会理事。

    「高齢者の栄養管理」の最前線に立ち、日々簡単につくれて栄養をしっかりとれるレシピを提案。正しい栄養知識を広めるべく、積極的に発信している。

    著書に、10万部突破の『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(若林秀隆監修・すばる舎)がある。

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    『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(塩野﨑淳子・著/すばる舎)

    『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(塩野﨑淳子・著/すばる舎)

    画像: お酒の大誤解|体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!

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