• 「健康でありたい」と願う人は多いのではないでしょうか。在宅栄養専門管理栄養士の塩野﨑淳子さんは「健康ブームの影響もあり、食べ物を体に良い・悪いと白黒つけて食物選択の範囲を狭めていることで、かえって健康を害するのではないかと危機感を感じている」といいます。大切なのは、良さだけでなくきちんと知識をつけること。大豆製品の栄養価についてご紹介します。

    豆腐や油揚げ、納豆などの大豆製品は
    どれも栄養価は変わらない?

    油で揚げたものは鉄や亜鉛量アップ

    日本には大豆を様々に加工して食べる、豊かな食文化がありますね。

    大豆を発酵させて味噌や納豆にしたり、豆腐は揚げたり、すりつぶして和え物にしたり。

    豆腐を加工すると栄養価も少し変わります。おもしろいのは、含有水分量が減るとミネラル類の含有量が増えていく点です。

    つまり、加熱して水分が飛んだ豆腐は「生の豆腐よりも栄養が濃縮されている」と考えることができます。

    画像1: 油で揚げたものは鉄や亜鉛量アップ
    画像2: 油で揚げたものは鉄や亜鉛量アップ

    たとえば、木綿豆腐100gに含まれる鉄と亜鉛はそれぞれ1.5mgと0.6mgですが、厚揚げは2.6mgと1.1mgです。油で揚げるため、脂質の含有量は木綿豆腐の約2倍になりますが、ミネラル類が不足しがちな方にはおすすめです。

    同様に、油揚げもミネラル類が豊富ですが、100g中の脂質含有量が12.5gとなり、木綿豆腐の約3倍になってしまいます。

    一度にたくさん食べるのは脂質のとりすぎになるため、おすすめできませんが、汁物や煮物などの脇役にするにはいいですね。

    高野豆腐(凍り豆腐)の場合は、一度乾燥させてあるので、木綿豆腐よりたんぱく質の含有量が高く、ミネラル類も豊富ですが、一度乾燥させてさらに水に戻すため水溶性ビタミンが溶け出してしまい、他の大豆製品に比べると水溶性ビタミンが少ないのが特徴です。これは調理工程上、仕方がないですね。

    発酵の力で栄養豊富な納豆

    画像: 発酵の力で栄養豊富な納豆

    納豆は同じ大豆製品でもまた別格です。

    100g当たりのたんぱく質の量は14.5gで、卵に含まれるたんぱく質よりも多く含まれています。食物繊維も6.7gで、鉄や亜鉛も豆腐より多く含まれています。

    ビタミン類ではビタミンKがほかの大豆製品に比べて桁違いに豊富で、納豆菌は腸内でもビタミンKを産生します。

    ビタミンKはワーファリン(血栓症などの予防のため、血液をサラサラにする薬)の効果を下げる働きがあり、ワーファリン服用中は納豆を食べられません。

    納豆を食べると、ワーファリンの効果が十分に得られず、血液が固まりやすくなってしまうことで、脳や心臓の血管が詰まって、命に関わることもあります。

    その影響は数日続きますので、時間をあければいいというものではなく、もしどうしても納豆が食べたい場合は別の薬に変更できないか、医師や薬剤師に相談してください。

    納豆はビタミンKが桁違い。
    葉酸や鉄分も多く含む

    ほかにも、納豆は葉酸などのビタミンも豊富なので、大豆製品の中でも納豆は非常に栄養価の高い食品と言えるでしょう。

    かくいう私も、もともと納豆は苦手でしたが、あまりにも栄養価が高いため、時々食べるようになりました。とくに、出産後の授乳中は意識して摂取するようにしていました。

    「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンKは胎盤を通過しにくく、母乳中のビタミンKが低いことなどから、新生児はビタミンKの欠乏に注意が必要とあります。

    また、何らかの疾病や加齢によって、胆汁や膵液の分泌量が減少している方は、極端に脂質を減らす食事をしていると、脂質に溶ける性質のあるビタミンKの吸収量が低下する恐れがあります。

    「油は体に悪い」と決めつけて、揚げ物や炒め物を食べないことが「健康に良い」と信じている方もいますが、油には「脂溶性ビタミンの吸収率を高める」という大事な役割がありますので、悪者にしないでくださいね。

    納豆にごま油やラー油などを少し垂らして食べるのも、おすすめです。

    <イラスト/平澤 南>

    本記事は『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(すばる舎)からの抜粋です。

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    塩野﨑 淳子(しおのざき・じゅんこ)

    管理栄養士・在宅栄養専門管理栄養士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。1978年大阪府生まれ。2001年女子栄養大学栄養学部卒。宮城県仙台市在住。

    長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションのケアマネジャーとして在宅療養者の支援を行う。現在は機能強化型認定栄養ケア・ステーション訪問栄養サポートセンター仙台(医療法人豊生会むらた日帰り外科手術クリニック内)で、在宅栄養専門管理栄養士として活動。一般社団法人日本在宅栄養管理学会理事。

    「高齢者の栄養管理」の最前線に立ち、日々簡単につくれて栄養をしっかりとれるレシピを提案。正しい栄養知識を広めるべく、積極的に発信している。

    著書に、10万部突破の『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(若林秀隆監修・すばる舎)がある。

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    『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(塩野﨑淳子・著/すばる舎)

    『体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』(塩野﨑淳子・著/すばる舎)

    画像: 大豆製品の大誤解|体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!

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