(『天然生活』2021年3月号より)
介護する側の心のケアも大事
両親と向き合う5年間で実感しているのは、介護には具体的なハウツーよりも「話せる人」が必要ということ。
カータンさんにとって、担当のケアマネジャーさんは大事なそのひとり。「まるで神さまのよう」と絶大な信頼を寄せています。
「ケアマネさんに『あなたはがんばっているよ』とか『切なさを乗り越えて偉いね』といってもらうだけで子どもみたいに泣いて、救われるんです。介護はする側の心のケアが本当に大切。人に頼ることをためらわないでほしいです」
そして介護への備えとして、両親が元気なうちに好きなものや身のまわりのことについて聞いておくことが、のちのち役立つといいます。とくに介護全体に大きく関わるお金のことは、どこにいくらあるか確認しておくと安心だそう。
「『子どもの世話にはならない』という元気な親の言葉はあてになりません(笑)。私は自分たち夫婦の老後のマネープランは、早めに娘たちに伝えておくつもりです。できるだけ娘が責任を感じたり切なくならないように、介護される備えの必要性も、ひしひしと感じているところです」
自分らしく介護するヒント
親の立場ならどう思うかを考える
優先順位は、両親の介護ではなく自分の生活に置く。それは、自分が介護される立場になったときに子どもに望むことでもあります。
「将来、娘が自分の生活を犠牲にして私の面倒をみていたら、辛いし悲しい。この気持ちは両親も同じだと思うんです。だからたとえば、娘のお弁当がある日は母の分もつくって届けるけど、ほかの日は宅配弁当をお願いしています。がんばりすぎないのが大事」
一緒に楽しい時間を過ごす
いくつになっても親にとって子どもは子ども。顔を見せて会話をして楽しい時間を過ごせば、両親の活力になります。お願いできることはプロに任せて、両親のさびしさに寄り添い、一緒に楽しむ感覚で実家に通っているそう。
「両親は高齢なので新型コロナのことは心配ですが、会う回数を減らして何かあったときに後悔するなら、予防をしっかりしていつも通り会おうと姉と決めました」
同じ境遇の人と話をする
介護において、もっとも避けたいのが「ひとりで抱え込むこと」。カータンさんはお姉さんと事あるごとに愚痴をいい合い、ストレスを発散することが大きな救いになっているといいます。
「同じ境遇の人に話すのが大切です。いくら親しい人でも、介護を経験してなければ共有できないことが多く、相手も気まずくなってしまう。愚痴やあるあるを話せる介護仲間を見つけるのがベストです」
〈撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美〉
かーたん
主婦ブロガー。2007年にブログ「あたし・主婦の頭の中」を開設。コミカルなイラストで日常を赤裸々に描き、主婦層を中心に人気が爆発。月間アクセス数は800万超、ブロガーとして確固たる地位を確立。近年は親の介護を中心に記事を投稿。悩みながらも体当たりに取り組む様が多くの共感を呼んでいる。著書に『お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中! 親のトリセツ』(KADOKAWA)など。
※ 記事中の情報は取材時のものです