(『天然生活』2020年8月号掲載)
福島から北海道へ。自然の恵みを感じて、日々の営みを
北海道・札幌から車で約3時間。ニセコ連峰を眺めながら、田園風景広がる田舎町を進むと、「たべるとくらしの研究所」があります。
2011年東日本大震災を機に福島から札幌へ、2018年冬にここ、蘭越町へ。清らかな水が流れる自然豊かな地で、“理事長”である伸也さんが畑で作物を育て、“副理事長”である明子さんが、その作物を調理・加工する、いわば、“種まきからテーブルまで”を担う活動を続けています。
「そもそも北海道に来たのは、自然が豊かだと感じたからです。震災で、日々の営みは、自然環境の恩恵の上に成り立っているものだと痛感しました。震災以降、こうして暮らしてこられたのも自然の恵みがあったからこそ」
そう語るふたりの生き方は、まさに“あるもので暮らす”、そのもののように感じます。
安斉さんの家で楽しむ工夫
大きさ・見た目にこだわらない
「少しぐらい小さくても見た目が悪くても、食べられれば」と笑う明子さんに、「正解をどこに持っていくかということ」と伸也さんが続けます。
無肥料・無農薬で丹精込めて育てた野菜は「貴重だと思えるし、素直にありがたい」と伸也さん。
自分たちの判断の基準がまんなかにどっしりと根づいているから、大きさや形といった世間一般のジャッジに惑わされることもないのです。
安斉さんの家で楽しむ工夫
加工して、長くおいしく
畑で採れた野菜や、伸也さんの実家の福島の「あんざい果樹園」から送られてくる果物は、新鮮なうちに明子さんの手でおいしいびん詰めに。そのままでは販売が難しい規格外品も、加工することで活用の場が広がります。
「10年ほど前、自然栽培にチャレンジする際、加工という技術が支えることで、自分たちのやりたい農業のスタイルが実現できるんじゃないか、と思ったのが始まり」と明子さん。
安斉さんの家で楽しむ工夫
出会いとご縁を大切にする
札幌でカフェを始めたのも(現在は閉店)、札幌から蘭越に拠点を移したのも、全部「ご縁があって」と話す安斎さん。
自分を奮い立たせながらはるか先の目標を目指すのではなく、目の前にあるもの、来たものを見つめ、知恵を絞って善を尽くす“とにかくやってみる”スタイル。
「毎日トライアンドエラー。でも、繰り返すことでわかってきたこともあって!」と話す明子さんに、気負いはありません。
〈撮影/古瀬 桂 取材・文/遊馬里江〉
「たべるとくらしの研究所」 安斎伸也さん・明子
(たべるとくらしのけんきゅうじょ/あんざい・しんや、あきこ)
北海道・蘭越町で、食と暮らしを研究中。加工品は、オンラインストアにて不定期で販売。月に1度、札幌の「庭キッチン」の厨房を担当。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです