(『あふれる日々を、ととのえる。』より)
下ごしらえの大切さは、祖母から教わった
「えっ、もうできちゃったの?」
「すごく早いですね」
自宅で来客のお食事を用意するとき、そんなふうに言われることがあります。
なれていて、手が早いからと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
準備しているのです。
料理は下ごしらえがいのち。
料理上手だった祖母がいつも台所に立ち、下ごしらえをしていた姿が今も目に浮かびます。
「これは今晩、これは明日の朝、これは食べる寸前に」
孫の私が覚えられるように、問わず語りに話しながら下ごしらえを見せてくれました。祖母の手によって準備されていく野菜の美しかったこと。
何事も、自分の目がよろこぶように
「どうしてこんなにきれいに切るの?」
「自分の目がよろこぶからよ」
どんな仕事だって、せっかくやるならきれいにやるのがいい。そんなことを教わるともなく、教わっていたのです。
我が家の冷蔵庫には、いつも白髪ねぎやささがきごぼうを水にさらしたものが待機しています。
来客の多い我が家では、3日連続でお客さまをお迎えするなんてこともしばしばです。これは、そんなある日の冷蔵庫の様子。
冷蔵庫は本当はもう1台ほしいくらい。普段は下から2番目は、1段まるまる空けてあるのですが、この日はパンパン。
ここまでパンパンなのはめったにありませんが、パズルのようにはめ込んで、ピタリとおさまると嬉しいもの。中身を見ながら、これはあれに、あれはこれにとにらめっこしながら気の張らない料理をつくるのが私流です。
本記事は『あふれる日々を、ととのえる。』(PHPエディターズ・グループ)からの抜粋です
〈撮影/木寺紀雄〉
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石村由起子(いしむらゆきこ)
1952年、香川県高松市生まれ。1983年に奈良市でカフェと雑貨の店『くるみの木』をはじめ、全国から人が集まる人気店へ成長させる。その後、三重県VISONの「くるみの木暮らしの参考室」や滋賀県長浜市の「湖のスコーレ」プロデュースなど幅広く事業を手がける。現在は奈良を拠点に、日本各地で地域活性拠点や、商業施設のプロデュースを行なっている。おもな著書に『小さな幸せみつけた』(主婦と生活社)、『奈良のたからものまほろばの美ガイド』(集英社)、『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『自分という木の育て方』(平凡社)、『おとなの奈良めぐり』(PHPエディターズ・グループ)など多数がある。
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