(『天然生活』2021年11月号掲載)
不調の時期は、自分と過ごしてあげる時間
「今回は病気にならないための暮らし方」がテーマなんですが……と、大谷百世さんにお話を振ると、インタビューの冒頭で、「不調には感謝します」「病を病にしないこと」という気になる言葉が、すっと出てきました。
「元気なときは意識が外へ外へと向き、なかなか自分の体に目がいかないですよね。でも不調を感じると『昨日おなかを出して寝てしまったな』『冷たいものを食べすぎてしまったかも』と、暮らしを見直すきっかけになる。健康になるためにやれることはたくさんありますが、でもそれは不調のときでないと、意識しにくいことだと思うんです」

すっきりと清められたサロン。チベット仏教の女神・グリーンターラの絵も
大学では美術を学び、卒業後にセラピストとしての道を歩み始めた大谷さん。南インド・ケララ州のアーユルヴェーダクリニックで研修を受けたことを皮切りに、レイキや瞑想、ヨガ、タイ古式マッサージ、エナビューティ、チベット伝統医学など、さまざまな学びを重ねます。
その道のりで、たくさんの人の体を診ながら、「どうして人は、不調になるのだろう」という疑問に向き合ってきました。

長年つくり続けている酵素シロップは、お客さまにも好評
「人って心から『自分自身が大好き』と思えると、すごく元気になるんです。自分が自分であることに満たされていると、自然に健やかでいられる。逆に『本当の自分』と『意識している自分』が乖離(かいり)していくと、体の調子をくずすということがわかってきたんです」
自分自身から離れていかないためには常に、奥底にある真の欲求、体の内側からの声に耳をすましてあげることが大切です。小さな違和感のうちに自分をケアして、意識を内側に向ける。
「不調の時期は、自分と過ごしてあげる時間」というふうにとらえ、そこから得た気づきを暮らしに反映させていく。その繰り返しが、健やかさにつながるのだと考えるようになっていったそうです。

「チベット医学で考えると、私は『水(ペケン)と風(ルン)』のタイプ。水の要素が強いと冷えやすいのでよく温め、睡眠をしっかりとるのが大切なんです」と大谷さん
いまを大切に生きることが、健康な暮らしにつながる
そしてもうひとつ、大谷さんがチベット仏教や医学を学びながら確信をもつようになったのは、「死ぬことは、生まれることと同じように祝福である」という考えでした。
自分の生に責任をもち、死を必要以上に恐れない。6年前にがんに冒されたお父さまを在宅で看取ったときに、その気づきが大きな心の支えになりました。お別れは光に包まれて、とても穏やかなものだったそうです。
「いつ死んでも思い残すことがないと思えるように、いまをしっかりと生きる。そんなふうに生きていくことこそが、真の健康につながるのではないかと思います」
病気にならないための私のお守り
季節の酵素シロップ

春の芽吹きどき、秋の実りの時季を中心に、15年ほど前から、つぎ足ししながらつくり続けている酵素シロップ。
「疲れたり、風邪の気配を感じたりしたときに飲むほか、『最近胃腸の調子が悪いな』と感じたら一食抜いて、酵素シロップのみに。消化力が上がり、おなかもすっきり」
スパイスとハーブでつくるのどスプレー

乾燥しがちなこれからの季節は、お手製のチンキをスプレーボトルに入れてのどケアを。ウオッカをベースに、クローブ、シナモン、ローズマリー、レモンピール、ラベンダー、タイムなどを漬け込んでいます。
「抗菌・抗炎症作用のある素材が多いので、歯周病ケアなどにも有効です」
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/田中のり子〉
大谷百世(おおたに・ももよ)
京都二条駅近くのサロン「Sua」のセラピスト。2011年独立。アーユルヴェーダ、タイ古式マッサージ、楽健法、エナビューティ、チベット医学などを幅広く学ぶ。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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