• 家を暖かく整えて、冬を迎える準備を少しずつ。寒い季節を少しでも快適に過ごすために。楽しい工夫の数々を北海道・美瑛で暮らす料理家のたかはしよしこさんに伺いました。
    (『天然生活』2022年12月号掲載)

    食に自然に風景に。冬も美瑛を味わい尽くす

    北海道・美瑛。青空の下、気持ちよく波打つ緑の丘に、ところどころ土色や黄金色が混じり始めたころ。東京から移住して3度目の冬を前に、料理家のたかはしよしこさんは、せっせと保存食づくりにいそしんでいました。

    「エネルギーあふれるキラキラと眩しい夏も大好きですが、活発に動いて忙しいぶん、冬のしんと静かななかで心を落ち着かせる時間も貴重で、そんな日々をいまから楽しみにしています」

    冬場もよしこさんのレストランにはお客さんがひっきりなしに訪れますが、雪でどうしようもないときもあります。そんな美瑛の暮らしを支えるのが、みずからこしらえておいた保存食。美瑛の大地で育ち、それぞれの最盛期においしさを閉じ込めた食材たちが、時を経てなお、食卓を盛り上げてくれるというわけです。

    「ここに来てよかったと一番に思うのが、きのこ狩りです。今年は雨の多かった夏から山に入り、たくさん収穫しました。落葉きのこと呼ばれるハナイグチが、一番ポピュラーでしょうか。自然の力のみで育ったきのこの力強いうま味、独特の香り、生を調理したときの十分に歯応えのある食感は、お肉と並ぶ主役級の魅力で。乾燥させると香りやうま味が増しますし、塩を加えて乳酸発酵させると、酸味のなかに味わい深いうま味も生まれ、スープや煮込み、餃子などの隠し味に重宝します」

    春に収穫した山菜のニリンソウは、今年初めて乾燥させてみたそう。

    「採りたてをゆでておひたしにしてもおいしいのですが、乾燥させることで特徴的な香りが際立ち、豚しゃぶなどお鍋にするとおいしいです」

    トマトソースはトマト200kgを使って仕込み。

    「トマト缶は、お店の分も含め、いっさい買わなくなりました」

    今年の9月から、よしこさんは、レストランに立つ日を1日減らす決断をしました。

    「娘と過ごすいま、この時間を、もっと大切にしたいと思ったんです。大きくなったら、きっと友達と過ごす方を好むようになりますしね。去年、私はスキーに1度しか行けなくて、すっかり家族から置いてきぼりになってしまったので、この冬はスキーもめいっぱい楽しみたいです」

    たかはしよしこさんの、冬の楽しみ5つ

    01_冬の楽しみ
    静謐な時間をラベンダーが彩る

    白一色の澄んだ冬景色に、ささやかな彩りを加えるのが、毎年夏に敷地内の畑から刈り取り、乾燥させておいたラベンダーです。

    画像: 敷地内に密生する白樺でつくったヴィヒタに囲まれながら、ラベンダー入りのお茶でほっとひと息

    敷地内に密生する白樺でつくったヴィヒタに囲まれながら、ラベンダー入りのお茶でほっとひと息

    「お部屋に飾って一年中楽しんでいますが、寒くなると温かい緑茶や中国茶に入れたり、ショートブレッドに焼き込んだり。無農薬栽培だから、安心してまるごと使えるのもうれしい。華やかな香りと愛らしい見た目の両方を味わっています」

    画像: 深蒸し緑茶葉とラベンダー3枝を入れ、熱湯を注ぐ。湯気とともに立つ香りに鼻をくすぐられ、心も安らぐ

    深蒸し緑茶葉とラベンダー3枝を入れ、熱湯を注ぐ。湯気とともに立つ香りに鼻をくすぐられ、心も安らぐ

    02_冬の楽しみ
    地物の手づくり保存食で冬の食卓をにぎやかに

    「東京にいたころは長野から取り寄せていた野生のきのこが、こちらでは近所の山で自生していて、そのおいしさにも感動しました。山菜やベリー類も豊富で、美瑛の地はまさにエディブルガーデンそのもの」

    画像: 春に摘んだニリンソウのドライは「昆布のようなお茶のような独特な風味」

    春に摘んだニリンソウのドライは「昆布のようなお茶のような独特な風味」

    きのこは乾燥させたり、乳酸発酵させたりして、パスタやスープ、リゾットに。

    画像: ざるにすき間なく並べたきのこが、10日ほど陰干しするとこんなに小さく

    ざるにすき間なく並べたきのこが、10日ほど陰干しするとこんなに小さく

    美瑛産トマトで仕込んだソースも、食材が乏しくなる冬の食卓を豊かにしてくれます。

    画像: 塩のみで調味したシンプルなトマトソースに、左2つはきのこの乳酸発酵

    塩のみで調味したシンプルなトマトソースに、左2つはきのこの乳酸発酵

    画像: 「今年は10種類程度のきのこを見つけられるまでになりました」。初見のきのこは、図鑑とネットで隈なく調べる

    「今年は10種類程度のきのこを見つけられるまでになりました」。初見のきのこは、図鑑とネットで隈なく調べる

    03_冬の楽しみ
    母から娘へ。“自宅で習い事”の再開

    「自分たちでできるものから」と始めた、娘・季乃ちゃんの“習い事”。よしこさんは料理教室、写真家でデザイナーの夫・景さんは、お絵描きが担当です。

    画像: お絵描きでは、よしこさんは審査員。目をつぶって選んだ3本のマーカーで同テーマの絵を描き、父娘で競う

    お絵描きでは、よしこさんは審査員。目をつぶって選んだ3本のマーカーで同テーマの絵を描き、父娘で競う

    「週に1度と思っていた料理教室ですが、忙しくてすっかり適当になってしまって。この冬からしっかり再開しようと思っています」

    教室のメニューは、季乃ちゃんのリクエスト形式。この日のレッスンはオムライスでした。

    画像: まずは玉ねぎのみじん切りから。ちょっとしたコツもていねいに伝える

    まずは玉ねぎのみじん切りから。ちょっとしたコツもていねいに伝える

    画像: 過日のレッスンはショートケーキ。レシピはよしこさんが口頭で伝え、季乃ちゃんがノートに書き取る

    過日のレッスンはショートケーキ。レシピはよしこさんが口頭で伝え、季乃ちゃんがノートに書き取る

    04_冬の楽しみ
    家族と一緒に雪山スキー

    スノーボードが得意なよしこさん。美瑛に来てからは、家族と一緒にスキーを始めました。

    「まだ上手に滑れないので、今年こそはと思っています」とにっこり。雪原を歩くように進む、クロスカントリースキーにも挑戦中です。

    画像: シンプルでかっこいい、よしこさんのスキー板とストック。こちらは斜面を下るアルペンスキー用

    シンプルでかっこいい、よしこさんのスキー板とストック。こちらは斜面を下るアルペンスキー用

    「こちらは運動不足解消のためという感じですが、専用場に出向かず近所でできるのは贅沢なこと。畑に入ってもいいよという農家さんもいらして、ありがたいです」

    05_冬の楽しみ
    本に映画に。おうち時間に浸る

    目まぐるしく動きたい季節にはどうしても後回しにしてしまう読書や映画鑑賞も、冬のお楽しみ。

    「昔読んだけれど、また読み直したい」星野道夫さんの本に、実際の絵を見て心が大きく揺さぶられたという神田日勝さんの画集など、腰を落ち着けて読み耽りたい本が、たくさん積まれていました。

    画像: 親交の深いミュージシャン・坂本美雨さんや、講演を聞いて以来ファンの理学博士・佐治晴夫さんの著書も

    親交の深いミュージシャン・坂本美雨さんや、講演を聞いて以来ファンの理学博士・佐治晴夫さんの著書も

    映画は、夫婦で見たいものは、季乃ちゃんが寝静まったあとに、プロジェクターで楽しむのだとか。



    <撮影/前田 景 取材・文/遊馬里江>

    たかはし・よしこ
    料理家。白樺の森に佇むレストランSSAW BIEIにて、美瑛の息吹を存分に堪能できるランチプレートをみずからふるまう。東京のアトリエでは「エジプト塩食堂」を展開。https://s-s-a-w.com/https://egyptjio.stores.jp/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



    This article is a sponsored article by
    ''.