(『天然生活』2023年2月号掲載)
物を半分以下に減らし、私だけの心地よさを探求
コロナ禍を機に、京都のはずれにある団地の部屋を片づけ始め、暮らしを心地よいものに変えていく等身大の工夫や気づきをインスタグラムで発信。すると、次第にフォロワーは増え、人気アカウントに。現在は19万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーとして活動するしょ〜こさん。
20年以上、インテリア誌でライターをしていましたが、今後の働き方を考えた末、インスタグラムを起点に、自分発信の仕事にシフトしていこうと決めたそう。
「実はライターに向いておらず、日々のストレスもかなりのものでした。自分が力不足なせいだと考え、我慢していることにすら無自覚でしたね。でも、部屋を片づけていくうちに、私、しんどいぞ、とようやく気づいたんです」
40歳でシングルとなり、3人の子どもたちと14年、過ごしてきた住まい。仕事と育児で手一杯だったこともあり、長らく家はどうでもいいと思ってきたそう。やがて長男、次男が巣立ち、末娘もこの夏、カナダへ留学。55歳にして、33年ぶりにひとり暮らしに。
住まいを変えるきっかけになったのは、ある日、ベランダに出てみたこと。コロナ禍前と変わらない平和な風景に、不安だった心がふと、和んだそう。以来、ベランダに椅子を置き、古道具のスツールをテーブル代わりに、お茶を飲んだり、本を読んだりして過ごすように。
穏やかな時間がインテリア好きだった少女時代を思い出させ、長年の住まいを、あたかも引越し先のようにゼロから整えることにつながっていったのです。
当時はまだ母娘ふたり暮らしでしたが、相談して手始めにふすまをはずし、丸3日かけて使わない物、いらない物をとにかく家から出していったのだそう。
住まいを愛することは、自分自身を愛すること
「いつか作家ものが欲しいと思いつつ、引き出物や実家からもらった食器を使いつづけていましたが、思い切ってほとんどを処分。迷ったら1カ月ほどダンボールに入れて別の場所に置いておき、本当に必要かどうか判断していました」
また、タオルをかわいく収納するのが憧れだったというしょ〜こさん。くたびれたものから順に処分し、上質感のあるふわふわのものと入れ替えていきました。
「独身時代から使っていた白い棚を廊下に置いて収納していましたが、イメージしていた黒いチェストとようやく出合えて。ガラス戸がついていましたが、面倒臭がりなので開閉が負担になるだろうと外し、ワンアクションで取り出せるようにしました」
家族が減ったことで、家電の見直しも。ほとんど観なくなっていたものの、「災害時に必要かも?」と置いてあったテレビは処分。「目ざわりな物は、無くすか小さくする」が基本方針に。
掃除機は壊れたタイミングで家電のサブスクリプションサービスに入会。さまざまなメーカーのものを、吸引力やデザイン性なども考慮しつつ使用しています。
「大きめの家電を買って所有するのは、いまの私には負担。処分するのも大変なので、多少割高でも、毎月支払うほうが気楽かなと」
炊飯器だけは棚の中に残しておき、忙しいときは3合まとめて炊き、小分けにして冷凍。ふだんは作家ものの一合炊きの炊飯土鍋で、炊きたてを楽しむことが増えたそう。
基本の道具が定まったことで、ほかの道具もおのずと合うものを厳選することになり、自然素材や昔ながらの銅器などが並ぶ、どこか懐かしく使い勝手のよいキッチンに生まれ変わりました。
暮らしに余白が生まれたことで好きな本をブックギャラリー風に置いたり、生花を楽しむ心の潤いも生まれたといいます。
「住まいを大切にすることは、自分自身を大切にすること。ないがしろにしていた住まいを慈しむことで、それまでの生きづらさも解消されていったように思います」
<撮影/伊東俊介 取材・文/野崎 泉>
しょ〜こ
インテリア誌のライターとして活動後、自身の暮らしを変える工夫をインスタグラムで発信したところ人気となり、インフルエンサーとして活動中。インスタグラム@shosworks
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです