(『天然生活』2023年2月号掲載)
暮らしに合わせて道具を選ぶ
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
台所に立ち、手際よく作業する髙橋百合子さん。きざんだ野菜をボウルに入れる動作も、薄手で小ぶりなまな板を使っているおかげでさっとスムーズです。
「大きなまな板を使っていた時期もあったのですが、重くて扱いづらいし、洗うのも大変。小さくて軽いまな板を何枚か使うほうが楽だって気づいたんです」
3年前に夫を亡くし、現在はひとり暮らし。とはいえ、こうした工夫は、夫婦で暮らしていたころから実践してきました。
「毎日仕事で忙しくしていることもあって、家事はなるべく短時間で効率よくこなしたいとずっと思ってきました。それにはどんな道具をどう使うかといった、小さな工夫の積み重ねが大事なんです」
ガラスの保存容器を使って中身を一目瞭然にしたり、機能的な洗剤や掃除道具を使ったり。
髙橋さんのもの選びや行動の基準は、「自分にとって気持ちのいい暮らしかどうか」です。
気持ちのいい暮らしとは、見た目にもすっきりしていてよけいなものがなく、手間がかからないということ。ただし、何が気持ちいいか、何がよけいかは、年齢とともに少しずつ変わってくる部分もありそうです。
「お鍋ひとつとっても、いまは小さいもののほうが便利です。歳を重ねるうちに食べる量も減ってきたし、人を食事に招くことも少なくなったから。大きいと、ついつくりすぎてしまうでしょう? 同じものを長く使いつづけることだけがいいとは限りません。いまの自分の暮らしに合った道具を使えばより快適になるし、むだも出ないですよね。道具を変えることで暮らしも変わると思うんです」
これまで数多くのサステイナブル=持続可能な生活道具を紹介してきた髙橋さん。自身の生活を振り返ってみると、とくに意識せずとも本質的に心地いいと思えるものを選ぶことが、結果的に小さな暮らしにつながっていると話します。
「大事なのは、無理なく続けられるかということ。いくら環境にいいことやものでも、面倒だと思う部分があれば続きませんよね。表面的ではなく、自分の芯の部分が快適だと感じる道具やライフスタイルを取り入れていく。そうすれば、おのずと持続可能な暮らしになるのだと思います」
小さな暮らしの心地よさ_01
小さな台所道具を選び、適量をつくる
現在ひとり暮らしの髙橋さんが愛用しているのは、直径16cmほどの鍋や20cm四方のまな板といった小ぶりな道具。
「フライパンも昔は直径26cmのものを持っていましたが、いまは20cmのものだけ。まな板もお鍋も、大きなものだと扱いづらい。小さなものを複数組み合わせて使うほうが作業しやすいんです」
道具が小さいと、自然とつくりすぎを防ぐことができるので、食材のむだも防げます。
小さな暮らしの心地よさ_02
ガラスの保存容器でストックを把握
調味料から食材、洗濯グッズまで。髙橋さんはあらゆるものの保存にガラスの容器を活用しています。
「調味料などが袋に入っている状態が心地悪いんです。きれいに並べられないし、袋の開け閉めにも手間がかかるでしょう。ふた付き容器はすぐに中身を取り出せるので楽。しかもガラスは中が見えるので、いつでも残量を把握できてむだな買い物をせずにすむし、使い忘れなども防げます」
小さな暮らしの心地よさ_03
冷凍野菜を活用する
ひとり暮らしのうえ、仕事柄、外食をする機会も多い髙橋さん。うっかりすると買ってきた野菜が使い切る前に傷んでしまうことも。そこで最近使い始めたのが冷凍野菜。
「きざみおくらはほかの野菜などと合わせてサラダに、里いもは煮ものにしたりしています」
必要な分だけ使えてむだが出ないうえ、下準備の手間も省けるので、あっという間に一品完成します。
小さな暮らしの心地よさ_04
レシートを保存してむだを見つける
最近始めたというレシートの保存とチェック。
「何にいくら使っているか、むだがないか、一度きちんと把握しておこうと思って。見返してみたら9割が食に関する買い物だとわかりました」
元々むだ遣いはしないタイプ。自宅から距離のある割安のスーパーに、運動を兼ねて足を運ぶこともあります。
「実は買い物があまり好きじゃないんです。スーパーに行くのは好きだけど、服を買うのは嫌いなの」
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<撮影/近藤沙菜 取材・文/嶌 陽子>
髙橋百合子(たかはし・ゆりこ)
「イーオクト」代表取締役。1983年に会社を設立。1990年、スウェーデンの環境機器の輸入販売を開始。現在はスウェーデンをはじめ国内外のサステイナブル(持続可能)で環境にやさしい生活雑貨の輸入販売を行う。そのほか、製品の企画やデザインなどを通じてサステイナブルな社会の実現を目指し、事業を展開している。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです