• 寒い夜、暖かな部屋で心静かに手を動かす、自分だけの時間を楽しんでみませんか。台所道具の専門店「だいどこ道具ツチキリ」店主・土切敬子さんの、台所道具の手入れにいそしむ夜長仕事を紹介します。
    (『天然生活』2020年3月号掲載)

    道具のお手入れを実験感覚で楽しむ、土切さんの夜長仕事

    土鍋のひび割れを、片栗粉で目止め

    画像: オーバル型が珍しい土鍋は萬古焼き。この時季、週に2度は食卓に活用していて、お店でも扱っている

    オーバル型が珍しい土鍋は萬古焼き。この時季、週に2度は食卓に活用していて、お店でも扱っている

    「土鍋の目止めは、米のとぎ汁やぬか、小麦粉などもよく耳にするのですが、いろいろ試してみて、片栗粉が私には一番しっくりきました」

    片栗粉の分量は1Lの水に対して大さじ2くらい。事前にボウルなどに水と片栗粉を合わせておき、土鍋に注いで火にかけ、クツクツとしてきたら火を弱めて15分ほどじっくり煮ます。

    「ときどき混ぜながら、のんびり時間が過ぎるのを待ちます」

    画像: 小さなエッグベーカーは鍋に水溶き片栗粉を入れ、その中に直接投入。片栗粉効果で鍋底がぶつかる心配なし

    小さなエッグベーカーは鍋に水溶き片栗粉を入れ、その中に直接投入。片栗粉効果で鍋底がぶつかる心配なし

    木のカトラリーや皿にオイルを塗り込む

    画像: 「ki-to-te」のしゃもじ、アンティークのパン皿など。「材木の種類によって風合いの違いがあるのも面白いんです」

    「ki-to-te」のしゃもじ、アンティークのパン皿など。「材木の種類によって風合いの違いがあるのも面白いんです」

    サーバーやスプーン、木の皿など、木製品のものをお店で多く取り扱っていて、自身の食卓でも、これらが多く登場する。

    「木のものは使うほどに風合いが増してよい雰囲気になるんですが、同時にカサつきが気になることも。オイルを塗るのが効果的ですが、食用のものはにおいやベタつきが気になるので、食器専用のオイルを使っています」

    やわらかい麻布に染み込ませてていねいにふき上げる。

    画像: 「オールドビレッジ」の木製食器用オイル。無色で酸化臭もなく、伸びがよいのが特徴。「ごく少量でしっかり伸び、ベタつきもなくサラッとしています。直接、口に触れるカトラリーなどにも安心して使えます」

    「オールドビレッジ」の木製食器用オイル。無色で酸化臭もなく、伸びがよいのが特徴。「ごく少量でしっかり伸び、ベタつきもなくサラッとしています。直接、口に触れるカトラリーなどにも安心して使えます」

    玄米を炊いて寝かせ玄米をつくる

    画像: 小豆を大さじ2ほど加えて。日に日に色が濃くなりおいしさも増すそう

    小豆を大さじ2ほど加えて。日に日に色が濃くなりおいしさも増すそう

    「土鍋でごはんを炊くようになり、炊飯器が不要になったので、何かに活用できないかなと思っていきついたんです」

    その炊飯器は現在、寝かせ玄米をつくるために活躍。1週間に一度ほど、圧力鍋で玄米を炊き、炊飯器へ移し替え。

    最長、5日ほど保温状態を保ちながら、昼食用のおにぎりや、おかゆなどに、少しずつ楽しんでいる。

    画像: 寝かせ玄米でつくるお粥。仕事の合間のサッと食べる昼食に最適

    寝かせ玄米でつくるお粥。仕事の合間のサッと食べる昼食に最適

    長く大切に使うために、日々できるお手入れを

    築40年ほどの自宅を改造し、2年前に台所道具を取り扱う実店舗を構えた土切敬子さん。

    土切さん自身が使って本当に使いやすいと感じたものだけを並べているとあり、「これはここが優れていて」「これはこんなときに便利で」など、どんなに小さなものでも、実に具体的かつ、道具への愛情のあるコメントを聞くことができます。

    そんな土切さんの夜長仕事というと……。

    「夕食づくりはもっぱら夫の仕事なのですが、台所が店の一角のような存在であることもあり、翌日の営業のために台所をきれいに整えることは心がけています。その延長で、自然と道具の手入れをすることが多いかもしれないですね」とのこと。

    たとえば上の写真は、土鍋の“目止め”を行っているところで、片栗粉を水で溶いたものを使っています。

    「土鍋を使い始めるときのほか、使っているうちにひびが入ってしまったときにも効果的です。15分くらいかけて煮たらそのまま火を止めて放置。翌朝にはペロッとはがれて目止めは完了です。ひと晩おくことがポイントなので夜長仕事にぴったりですね」

    道具を長く使いたいから――。土切さんの手入れを見ていると、そんな思いを感じさせます。

    「土鍋の目止めなどもそうですが、実験感覚で楽しんでいるところもあるんです。お客さんに“これいいですよ”と教えてもらうこともあったりして」

    “使ってこそ”の台所道具。長く気持ちよく使うため、今宵も道具の手入れにいそしみます。


    〈撮影/大森忠明 取材・文/結城 歩〉

    土切敬子(つちきり・けいこ)
    テキスタイルの企画デザインの職を経て、2017年、東京・三鷹市で台所道具の専門店「だいどこ道具ツチキリ」を開く。夫と娘の3人暮らし。
    インスタグラム:@daidoko_tsuchikiri

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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