• 支え合い、認め合う大切なつながり。少数も大勢も、世代も血縁も、飛び超えて、新しい社会で自由に変容していく多様な家族の形。料理家 坂井より子さんは、夫婦ふたり暮らしから、9人暮らしになりました。どんな状況でも、前向きに楽しむことが大切と話します。
    (『天然生活』2021年9月号掲載)

    いま、家族として思うこと

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    夫婦ふたりから始まった家族の暮らしが、今や9人に。これまで、そして現在についての思いを聞きました。

    結婚して50年。この間に、私の家族の形や暮らしはさまざまに変化してきました。結婚してからのふたり暮らし。娘と息子が生まれてからの4人暮らし。その後、子どもたちが留学してまた夫婦ふたりに。

    60代に入ると、退職した夫が「いままで一度も経験したことがなかったひとり暮らしをしてみたい」といって新潟に行き、ひとり暮らしをした時期もあります。

    2年ほどして夫が戻り、アメリカから帰国した娘家族との同居が始まりました。70代に入った5年前からは息子家族も加わって、いまの9人暮らしになっています。

    どんな状況でも受け入れ、前向きに楽しむ

    それぞれの時期を振り返ってみると、どんな状況でも自分なりにポジティブに受け入れて楽しんできたのだと思います。

    子どもたちがアメリカに留学したときも、寂しいというより「留学先に遊びに行ける」という気持ちをもつようにしました。また、一時期ひとり暮らしをしていたころと、いまの9人暮らしの生活はまったく違います。

    ひとりのときは、料理教室をするかたわらお友達と出かけたり、夜更かしをしたりと、気ままな生活を楽しんでいました。いまは平日、9人分の夕食をつくるので、以前より自由な時間はありません。

    でもこれまでいろいろな家族のかたちや暮らしを経験してきたので、頭のどこかで「いつかまた、自分の時間ができる日も来るだろう」とおおらかに考えることができている気がします。

    家族に対しても不満を感じることはありません。細かいことを気にし始めるときりがない。物事をマイナスに受け止めない性分なんです。

    最近は週に2度ほど、夫と三浦半島の突端に新鮮な魚や野菜を買いに行くのが楽しみです。一方、自分の友人と出かけたりするのも私にとっては大切な時間。

    画像: 自宅の近くにある畑では、坂井さんの夫、輝夫さんが無農薬で野菜を育てている。季節ごとにとれる新鮮な野菜を使って食事をつくるのも、日々の楽しみのひとつ

    自宅の近くにある畑では、坂井さんの夫、輝夫さんが無農薬で野菜を育てている。季節ごとにとれる新鮮な野菜を使って食事をつくるのも、日々の楽しみのひとつ

    夫も毎日畑に行くほか、地元の幼なじみとしょっちゅう出かけています。お互いに家族との時間と自分の時間、両方をもっている。常にべったりではない関係がちょうどいいなと感じています。

    9人一緒に暮らしているとはいえ、3つの別々の世帯。干渉しないのがポリシーです。とはいえ私たち夫婦が年を重ねつつあるいま、子どもたちが一緒に暮らしていることは、やはりすごく安心です。いま、こういうかたちで暮らすことができて、とてもラッキーだなと思っています。

    最近は朝5時に起きて、1時間近く散歩するようになりました。

    海岸を歩いて富士山などの風景を見ながら、「ああ幸せだなあ」と声に出していっているんです。

    家族の思い出

    結婚してからの50年、生活にさまざまな変化が起こっても、いつでも前向きに受け入れ、毎日を過ごしてきました。

    結婚当初、最初に住んだ家の前で

    画像: 結婚当初、最初に住んだ家の前で

    7歳年上の夫とは職場で知り合った。

    「私は実家が鎌倉、夫は逗子だったので、帰りに上司の車で一緒に送ってもらうこともあって。職場の仲間で遊びに行くこともよくあり、夫もそのうちのひとりでした」

    結婚当初は、逗子にある家に住んだ。しばらく共働きの生活をしたのち、坂井さんは家庭に入ることに。

    子育て真っ只中、いまの家がある庭で

    画像: 子育て真っ只中、いまの家がある庭で

    長女の真理子さんが6歳、長男の文雄さんが4歳ごろの写真。現在暮らす土地にあった、前の家の庭で撮った一枚。

    「このころ、土曜日は鎌倉の私の実家で、日曜日は逗子の夫の実家へ行って夕食を食べるのが習慣でした。どちらの実家も、私たち家族のやり方に口出しするようなことは一切ありませんでしたね」

    子どもが留学し、2人の生活に

    画像: 子どもが留学し、2人の生活に

    40代に入ると、子どもたちがアメリカに留学し、久しぶりに夫婦ふたりの生活に。

    「子どもたちが手を離れたので、平日は家事や夕食の支度を済ませてからお友達と出かけたり、周りから頼まれて少しずつお料理を教え始めたりしていました」

    夫とは週末、友達夫婦と一緒にあちこちに出かけたりしていた。

    夫の両親や親戚と集まって

    画像: 夫の両親や親戚と集まって

    30年ほど前、夫の実家で開かれた夫の父親の誕生日祝い。坂井さんは40代半ば、夫は50代のころ。坂井さんの子どもたちは留学中。

    夫の実家、坂井さんの実家ともに、お祝い事や節目の行事などの際には親戚で集まった。いまも近くに住む親戚とは畑でとれた野菜を届けたりなどのつきあいを続けている。

    坂井より子さんの家族の年表

    1971年(25歳)結婚し、夫とふたり暮らしに
    1974年(28歳)娘誕生
    1976年(30歳)息子誕生 子育て期
    1990〜2003年(40〜50代)娘が高1からアメリカ留学へ。その後約13年アメリカ滞在。息子も高1から大学卒業後までアメリカ滞在。この間は夫婦ふたり暮らし。少しずつ料理を教えるように
    2007年(61歳)夫が退職後、66歳で新潟でひとり暮らしに。より子さんは本格的に料理教室を始める
    画像: レシピはカードにきれいにまとめて

    レシピはカードにきれいにまとめて

    2008年(62歳)娘家族(4人)が帰国し同居することになったため、夫も新潟から戻る
    2016年(70歳)家を新築し、娘家族(4人)、息子家族(3人)と9人で同居
    2021年(75歳)現在
    画像: 夫が丹精込めてつくった野菜です

    夫が丹精込めてつくった野菜です

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    <撮影/柳原久子 取材・文/嶌 陽子>

    坂井より子(さかい・よりこ) 
    1946年生まれ。主婦としての豊富な経験を生かし、やさしい家庭料理や暮らしの知恵を伝授。幅広い世代の女性から支持を集めている著書に『暮らしをつむぐ』『受け継ぐ暮らし』(ともに技術評論社)。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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