(『天然生活』2022年9月号掲載)
親と一緒の作業を通じ、子どもに戻った感覚に
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
Emiさんが両親と一緒に本格的な実家の片づけに取り組み始めたのはいまから4年前。母親が入院したのをきっかけに、父親も家事をできるよう、わかりやすく楽な仕組みをつくってあげたいと思ったのです。
片づけを進める際に意識したのが“親に寄り添うこと”と“前向きな姿勢”。背景には、十数年前に実家の片づけを手伝った際、つい親にきつく当たってしまったという経験がありました。
「親のためというより、自分が実家で過ごすときに楽をしたい、という意識だったのだと思います。いま感じているのは、実家の片づけはものを処分しようと押しつけることではなく、親がこれからの人生を楽しく、前向きに過ごすためのものだということ。この目標を親とも共有しているので、スムーズに進められているんです」
片づけは、Emiさんにもうひとつの恵みをもたらしました。
「親と一緒に片づけているうちに、子ども時代の親子の関係に戻った感覚に。ものを整理しながら、父と母の生きてきた人生を見せてもらっているような気もします。実家がすっきりするのはもちろん、片づけは親子のコミュニケーションをつくるんだな、と実感。片づけもほぼ終わり、残すは納戸くらいなのですが、終わってしまうのがさびしい気もしています」
悩んでいませんか? 実家の片づけ
スムーズに進めたくても、実際にはさまざまなハードルが。これらを解決するヒントを紹介します。
ものが多すぎて手をつけられない
頻繁に実家に帰れず、片づけを手伝えない
心配して口を出すと嫌がられる
実家のどこに何があるのかわからない
Emiさん流、親と前向きに片づけるためのルール
片づけは長期戦。気持ちよく進めていくために大切なのは、あせらず、親との信頼関係をしっかり築くことです。
【ルール 1】 親を責めずに、仕組みを変える
実家に行くとソファに新聞が置きっぱなしになっていることがよくあったというEmiさん。
「親のせいではなく、新聞の置き場所が決まっていないからだと考え提案したら、片づくようになりました」
親を責めず、仕組みを変える提案をすることでお互いに気分が楽になり、アイデアも出しやすくなります。まずは毎日使う台所から試してみても。
【ルール 2】 否定せず、プラスの言葉で声がけを
最初から「捨てよう」「いらない」といった言葉ばかりかけると、親は自分の人生を否定された気持ちになりかねません。
「『今後の人生に残したいものを選ぼう』といった前向きな言葉をかけたほうがやる気を引き出せます。不要なものを売ったり寄付したりする場合も、『だれかのために役立てよう』というと、親の心には響きやすいと思います」
【ルール 3】 コミュニケーションをこまめにいいとる
その日の食事や行った場所など、ふだんから他愛もないことをやり取りしていると、いざ片づけの話をするときもお互いに構えず、話に入りやすくなります。
メールやSNSで写真を送り合うのもおすすめ。
【ルール 4】 小さな困りごとを聞く
日頃から“困りごとを解決し合える関係”という土台を親とつくっておくと、片づけに関しても信頼してくれます。
「インターネットで買いたいものはある? 」などと具体的に聞いて手助けするのがコツです。
【ルール 5】 親の家≠自分の家 という前提をもつ
親の価値観は自分とは別のもの。とくに実家を出てからかなりの年数がたっている場合は、暮らし方や考えが違っていて当然です。
親の生活を尊重し、自分の考えを押しつけすぎないことが大切です。
【ルール 6】 まずは親の家にある自分のものから
実家に自分の本や服などを預けている場合は、親のものに口を出す前に、まずは実家にある自分のものを片づけましょう。
その背中を見ることで、親も片づけたいという意欲がわいてくるかもしれません。
<取材・文/嶌 陽子 イラスト/ヤマグチカヨ>
Emi(えみ)
整理収納アドバイザー、「OURHOME」主宰。「家族の“ちょうどいい”暮らし」をコンセプトに、ものづくり、執筆、企業との共同開発やレッスン運営などで活動中。著書は『親に寄り添う、実家のちょうどいい片づけ』(白夜書房)など計18冊。インスタグラム@emi.ourhome
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです