(『人生が変わる台所道具 私を助ける小さな働きもの』より)
料理は、道具との共同作業。機動力があって使いやすいものがいい
「台所道具に対しては、本当にこだわりがなくて、包丁はもらいものだったり、スーパーで安売りしているフライパンを使っていたりしたんです」と笑うコウさん。ただ、それは理由があってのこと。
「そもそも料理研究家とは、家庭料理のレシピを提案する仕事なので、一般の方が使っている道具でおいしくつくれないと、意味がないと思うんです」
手頃な値段で買えて、軽くて使いやすく、収納もしやすい。そんな条件を兼ね備えた道具の代表的存在が、韓国のアルミ製トレイやカップ、ボウル。これらは、コウさんにとって下ごしらえにはなくてはならない道具たちです。
さらに重視しているのは機動力。
「大きいものの方が万能に使えそうですが、実は小さいものの方が、機動力があって使いやすい。つまり、『小は大を兼ねる』という結論に至りました」
コウさんの愛用道具
料理の下ごしらえには欠かせない「マッコリカップ」
韓国のお酒、マッコリを飲むためのカップ。それを調理道具として使い始めたのが、実はコウさんです。
アイデア次第で、オリジナルの使い方を発見するのも楽しいそう。
「韓国料理って、材料がすごく多いんですよ。五味五色といって、一品に5つの味と5つの色を入れるという考え方があり、薬味なんかもたくさん使う。そんなときに、マッコリカップにそれぞれの材料を入れたら、それがすごく使いやすいなって。
韓国では、そういう使い方をしている人はあまりいなかったと思いますね。一時期は、南大門市場と東大門市場からマッコリカップがなくなったといううわさも……笑」
大小2サイズあり、重ねて収納できるから場所を取りません。
料理をする前にまずカップをいくつか並べて、切った野菜を次々に入れていくと、余計な動きがなくなり、料理がはかどります。
下ごしらえがスムーズにいくと、気持ちにも余裕ができて、料理上手になれた気に。
まずは、下準備の方法から見直してみませんか?
コウさんの使い方
プルコギをつくる
1 4種類の野菜と牛肉を甘辛だれで炒め合わせてつくるプルコギ。まずは使う野菜(玉ねぎ、にんじん、細ねぎ、しいたけ)をトレイに出す。牛肉(切り落とし)は200gを用意。プルコギを巻いて食べるためのレタスや青じそは、さっと水に通してからトレイに置き、濡らしたキッチンペーパーをかけておくとシャキッとする。
2 玉ねぎ1/2個としいたけ2~3個は薄切りに、にんじん1/2本はせん切りに、細ねぎは5cm長さに切る。野菜の切れ端などはマッコリカップへ。
3 合わせだれ(しょうゆ・酒各大さじ2、白炒りごま・砂糖・ごま油各大さじ1、にんにく・しょうがのすりおろし各1/2かけ分)はマッコリカップに入れて混ぜておく。
4 ボウルに牛肉と合わせだれを入れ、細ねぎ以外の野菜を加えて、全体をよく混ぜ合わせる。最初に混ぜ合わせておけば、あとは一度に炒めるだけ。このアルミのボウルもよく使うアイテム。火にかけられるので鍋にもなり、ビビンパやスープの器にも。
5 フライパンを中火で熱し、ボウルに混ぜ合わせた材料を一気に入れて炒める。たれが絡んでいるので、肉がしっとり炒めあがり、焦げつく心配はなし。全体に火が入ったら、細ねぎを加えてさっと混ぜ合わせ、器に盛る。
マッコリカップについて
名称:マッコリカップ
製造地:韓国
サイズ:(大)直径13×高さ5.5cm(容量570mL)/(小)直径11×高さ5cm(容量350mL)
素材:アルマイト
使用年数:約15年
韓国の市場の金物店などで販売されている。最近では、日本の店やネットでも購入可能に。
本記事は『人生が変わる台所道具 私を助ける小さな働きもの』(家の光協会)からの抜粋です
〈撮影/馬場わかな 取材・文/広谷綾子〉
コウケンテツ(こう・けんてつ)
大阪府生まれ、東京都在住。料理研究家で、一男二女の父。日々ごはんをつくる人のために考案される飾らない料理は、YouTubeなどで大人気。自身のルーツである韓国料理をベースに、世界を旅して学んだ料理も交えて、だれもがつくりやすい料理に仕立てる。2023年3月には初の絵本を2冊同時出版するなど、活動の幅を広げる。
料理研究家コウケンテツ公式チャンネル(YouTube):@kohkentetsukitchen
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「あなたの人生を変えた台所道具を教えてください」というテーマから、暮らし関係の仕事に携わる6人が厳選した愛用の台所道具を紹介。道具のお話を聞くうちに、道具の背景にある、料理や暮らしのことが見えてきました。「料理をもっと楽しむ」ために、6人6様のストーリーを読みながら、自分のライフスタイルに合うものを探してみてください。