(『天然生活』2024年4月号掲載)
曲げわっぱ弁当箱の工房拝見
「栗久」の曲げわっぱは、店舗裏の工房でつくられています。製品のパーツづくりは機械を駆使し、曲げ加工や組み立て、仕上げなどはほぼ手作業。11人の従業員たちがそれぞれの持ち場で細やかに手を動かしています。
「職人の勘に頼るものづくりは品質を落とす」というのが栗盛さんの持論。樺細工の技術も取り入れて「だれがつくっても精度の高い曲げわっぱができる」製法を考案。従業員の要望も聞き、作業を効率的に進めるためのあらゆる型や道具を手づくりしています。
「板を曲げて乾かすときや側板の接着と底入れに型を使うのは栗久独自です。うちの職人はみんな腕があるけど、型や道具を使えば、より正確に、力のない女性でも手を痛めずに作業できる。みんなが無理なく製作に向かえることも、品質の向上につながるんです」
作業工程
1 製材、木・部材取り
製品のサイズごとに本体の側板部分、ふたと底などのパーツを木取りする。その後、側板の接合部分を薄く削り、底をはめる溝を掘って加工する。写真はふたの天板を15枚重ねて丸く削っているところ。
2 煮沸
曲げ加工をする板材を一晩水につけて木中の空気を追い出し、熱湯で4~5時間煮沸。ヤニの滲出を防止する。終わったら一枚一枚確認。少しでもひびが入ったものはあとの工程で割れてしまうので除く。
3 曲げ加工、乾燥
温めて柔らかくなった板材に「ゴロ」と呼ばれる楕円の木型を巻きつけて丸め、グラスファイバー製の型に入れて木ばさみで留める。そのまま3日ほど乾燥させて曲げグセをつくる。
4 接合部分などを整える
曲げわっぱの本体とふたの接合部分をカットして「つま取り」加工をする。弁当箱のサイズごとに、つま取りの型もつくられている。ちなみに接合は、日本式には右前合わせが多い。
5 本加工
接合部分を接着材で留め、次に底板を側板の溝にはめて接着する。曲げわっぱを型にはめて中に木型を入れ、ボルトを締めて固定。外側から熱を加えて接着力を高める。型から外し、表面をやすりがけする。
6 桜皮とじ
接合部に目通し錐で穴をあけ、なめした山桜の樹皮で縫い留める。「昔は接着にごはん粒やでんぷんを使ったから接合部から水が浸入しやすかったけど、いまはほとんどない。より丈夫にするために縫います」
7 塗装、乾燥
弁当箱の外側をスプレーでウレタン塗装する。吊り下げた2台の蛍光灯で明るく照らし、慎重に薄くむらなく仕上げる。塗装後、乾燥させたら完成。「塗りは機械でなく手作業で。仕上がりが全然違います」
「栗久」の技と知恵
重要な曲げ部分と天板、底板の接合は、曲げ部分に溝を入れて「掻き込み」加工をし、そこに天板、底板をはめ込む。
「強度を高めて、水漏れを防ぐ、木工古来の極意です」
栗久(くりきゅう)
秋田県大館市中町38番地
電話:0186-42-0514
https://www.kurikyu.jp/
※ 「秋田・大館「栗久」の曲げわっぱ。お弁当箱ができるまで」は『天然生活』2024年4月号、P.44~49に掲載されています。
<撮影/山田耕司 取材・文/熊坂麻美>
栗盛俊二(くりもり・しゅんじ)
昭和23年大館市生まれ、伝統工芸士。世界初の円錐型の曲げわっぱなど、木に関する豊富な知識とアイデアをもとにした製品で数々のグッドデザイン賞を受賞。海外も含めて積極的に各地へ赴いて展示や実演を行い、現地の声を聞いて製品づくりに生かしている。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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