春本番で、うっとうしい花粉症シーズンの到来です。源保堂鍼灸院・瀬戸佳子先生に症状が楽になる暮らし方を教わりました。今回は、花粉症を悪化させる生活習慣について伺います。
(『天然生活』2023年4月号)
花粉症の時季はできるだけ気持ちを大らかに
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
そもそも花粉症はざっくりいうと、「体のバリアがきちんと働かず、デトックスができていない状態」のこと。
健康な体には本来、①体に余計なもの、不必要なものが入らないように守り、②入った場合は速やかに外に出し、③出せない場合には体内で解毒しようとする機能があります。
花粉症はこの3つの仕組みがうまく働かなくなった状態のことなのです。体のバリア機能をつくるのは、東洋医学で「脾」と呼ばれる胃腸関係、排出や解毒を担当するのは「肝」と呼ばれる臓器です。
ここで注意なのは、「肝」は単純に食べ物関係の排出・解毒だけでなく、精神面のストレスも受け止める臓器であるということです。イライラや怒り、落ち込みやクヨクヨ。
「いいたいことがあるのに、いえない」という鬱積した気分も「肝」の負担となるのです。
昨年末から今年にかけて、物価高や先の見えない世界状況など、ストレスが強くなる状況が続きました。
それまで何とか我慢してきたものが限界にきて、そのストレスが暴飲暴食を呼んで「脾」を傷め、不調を招いている人が急増しているのです。
花粉症は基本的に「肝」や「脾」のケアが対策となり、食べ物や生活習慣だけでなく、精神的なストレスも悪化の原因になることを心にとめておいてほしいのです。
ストレスの要因を完全に取り除くことはできませんが、できる限り「まあ、いいか」「ほどほどにやろう」と、大らかにとらえることで、体への影響を減らすことができます。
花粉症対策も頭でっかち大真面目に取り組むのではなく、「こうすると花粉症がちょっと楽になるかもな」くらいのゆるやかな感じで、取り組むようにしてみてください。
この時季控えたい花粉症を悪化させる生活習慣
花粉症を悪化させるのは、「脾」(≒胃腸)と「肝」(≒肝臓)を疲れさせる習慣。この時季は以下のものを避けましょう。
こってり料理・激辛料理
こってり料理とは揚げものや、チーズなど乳製品を使った食べ物。コンビニのお弁当やお総菜をよく食べる人は、揚げものが多いので、気をつけましょう。
激辛料理に入っているとうがらしやしょうがは発汗を促す効果があり、一見よさそうに思えますが、食べつづけると皮膚が乾燥して「衛気」を損なう原因に。バリア機能が弱い人は注意が必要です。
体を冷やす生活
春はおしゃれの気分が盛り上がり、つい早く薄着になりたくなるものですが、体が冷えると「衛気」「正気」は弱まり、体のバリア機能が低下します。また内臓が冷えると、消化力も落ち、「痰湿」もたまりやすくなります。
花粉の時季は、おしゃれよりも温め優先で。とくにおへその下あたりや足首、首まわりなどは冷やさないように注意してください。
寝不足&夜ふかし
東洋医学ではある臓器が修復され、活動的になる時間帯が臓器ごとに決まっていて、深夜1~3時は「肝」の時間帯。この時間に熟睡できていると「肝」が休まり、デトックス機能が回復しやすくなります。
この時間に起きていたり、ましてやお酒を飲んだりしていたら、「肝」には大ダメージ。寝る直前のスマホ使用も眠りが浅くなるので、止めましょう。
甘い乳製品をよく食べる
甘いもの、脂っこい乳製品は「瘀血」を増やし、「肝」の負担になるものです。生クリームを使ったスイーツ、バターたっぷりのクッキー、甘いラテなどのドリンクは、大げさにいえば、花粉症の体に爆弾が落ちているようなもの。
朝ごはんに菓子パンや、仕事中に甘いジュースなど、意識していないものでも、ちりも積もれば増えるのでご注意を。
スマホで目を酷使
東洋医学では、「肝」と目は密接な関係があると考えます。目が疲れると「肝」も消耗し、「肝」の調子が悪いと、目が疲れる、ぼやける、視力が低下する、ドライアイといった不調が出る関係にあります。
現代生活はとにかくパソコンやスマホで目を酷使するのが当たり前になっています。花粉の時季は、いつもよりスマホは控えめを心がけて。
アルコールで肝臓を酷使
花粉症の人にとってお酒は、百害あって一利なし。解毒担当の「肝」をクタクタに酷使するだけでなく、お酒の多くは体内に熱を生じさせるため「熱毒」がたまります。
熱がこもると体は潤いを失って、粘膜や皮膚が乾燥してバリア機能が低下する原因に。お酒好きな人が禁酒をするのは難しいと思いますが、せめて花粉シーズンは量や回数を減らしましょう。
ストレス・疲労をためる
ストレスや疲労は「肝」の負担にます。春先の気温や湿度、気圧の変化などは体にとってストレスですし、卒業や入学、年度末や新年度といった環境の変化も多く、精神面のストレスも重なります。
真面目になりすぎず、6~7割の出来でも「まあ、いいか」と大らかに構えるようにしてください。
垢すり・ピーリング
肌は潤いがあってこそ、バリア機能が発揮されます。逆にいうと、乾燥し荒れた肌は、花粉がバンバン体内に侵入すると東洋医学では考えます。
「肌がきれいになる」という垢すりやピーリングは、このバリア機能を人工的に取り去ってしまうようなもの。花粉の時季に行うのは避けましょう。また脱毛も「衛気」が乱れる行為で、この時季は控えましょう。
<監修/瀬戸佳子(源保堂鍼灸院) イラスト/ヤマグチカヨ 構成・文/田中のり子>
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師。国際中医専門員。東京・青山の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基づいた食養生のアドバイスを行う。雑誌やweb、セミナーの講演などでも幅広く活躍。著書『お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』『気血スープ』(すべて文化出版局)が好評発売中。https://genpoudou.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです