(『天然生活』2022年3月号掲載)
私のシンプルライフの原点
私のシンプルライフの原点は、若いころにした旅です。スーツケースは持たずにショルダーバッグひとつで、世界中を旅しました。
旅行中は荷物を増やしたくないので、本は読んだそばから気に入ったフレーズをノートに書き写して手放し、服も同じものを繰り返し洗濯して着ていました。
ものより経験のほうが大切ですから、いまでも思い立ったらぱっと飛行機に飛び乗れるような、旅人の心をもって生活するのが理想です。
ドミニック流の自分らしい「シンプル」の見つけ方
書くことを大切に。大切なことはノートに残す
日記のように毎日ではありませんが、何かあったらノートに書き込んでいます。一年が終わったら、読み返して1〜2ページにまとめます。経験や思い出を書き残すことが、財産になっています。
ほかにも、こういう部屋に住みたいとかあそこに行きたいといったことも書きます。すると、実現しなくてもイメージのなかで実現したような、幸せな気分にもなれるのです。
もの選びのために、自分のルールをもつこと
私のもの選びの基準は、丈夫でコンパクトで、軽いことです。せっかく買ったのにすぐに壊れたり、場所をとったり、重かったりしたら、ストレスになるからです。
額縁に入った絵より掛け軸のほうが好きですし、バスタオルは持たずに手ぬぐいサイズのタオルを使っています。選択肢が豊富にあるよりも、ストレスを感じなくて済むための自分なりのルールをつくると楽ですよ。
自分の変化は、柔軟に受け入れる
最近、細長いデスクを買いました。パソコンを置き、便箋や文具などを引き出しにしまっています。いままではなくても平気だったのに、使ってみると、それまでどうしていたのか不思議なくらい便利です。
その代わりに文具をしまっていた小さなたんすは処分しました。必要なものは年齢や暮らしに合わせて変わっていくものですから、しなやかに対応することも大切です。
持ちものの量よりもスペースの使い方に目を向ける
自宅の押し入れを壊して壁に和紙を貼り、床に畳を入れて、本棚とちょっと横になれるぐらいのソファを置きました。
押し入れにものがいっぱい入っていたらできなかった、空間の有効活用です。ものを処分すると、スペースが広くなります。
そこに自分にとって大切なものを置けば、自分らしくいられるアットホームな空間をつくることができます。
<取材・文/長谷川未緒 イラスト/カトウミナエ 協力/原 秋子>
ドミニック・ローホー(どみにっく・ろーほー)
著述業。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得後、イギリス、アメリカ、日本で教鞭をとる。シンプルな生き方を提唱した著書がベストセラーに。『捨てる贅沢 モノを減らすと、心はもっと豊かになる』『少ないもので料理する シンプルな台所で、ミニマムクッキング』(ともに幻冬舎)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです