(『天然生活』2022年3月号掲載)
シンプルライフは豊かで贅沢
自分に合うシンプルな暮らしは、若いころはわからないと思います。いろいろと経験したり失敗したりすることで学び、わかってくるものだからです。私もたくさん失敗してきました。
シンプルライフの実現はシンプルにはいかないんですね。「いま」を満ち足りたものにするためのちょっとした技や工夫を日々の生活のなかで極めていく。
トライアルアンドエラーを繰り返し、たどり着くものだと思います。シンプルになればなるほど、その生活は豊かで贅沢なものに感じられるはずです。
ドミニック流の自分らしい「シンプル」の見つけ方
毎日使うことが、最大のお手入れになる
上質なものはもったいなくて、ふだんの生活には使えないという人もいるかもしれません。でも、いいものは使えば使うほど味わいが出てきますし、特別なケアは必要ありません。
たとえば革のバッグは、使うことで手触りがやわらかくなり、表面につやが出てきます。漆の器も同じです。しまい込まずに、毎日、大事に使うことが一番のお手入れになります。
自分の定番となるユニフォームを持つ
私はいつも同じ格好をしています。ブランドはいろいろですが、冬は黒のタートルネックセーターに、黒のポケットなしのパンツ。夏は黒の七分袖のTシャツに、パンツは冬と同じものです。
周りの人は「いつも同じ服を着ている」と思っているかもしれませんが、制服のように定番を決めておくことで、コーディネートに迷うことがなく、服選びのストレスもありません。
捨てられない思い出の残し方
不要になっても手放せないものの筆頭は、思い出の品でしょう。現在と未来の自分の幸せに必要な品だけ、取っておくことにしてはいかがでしょうか。
私も叔父と叔母が写った写真は捨てられずにデスクに飾っています。また、母が介護施設に入る際はクリスタルグラス6個だけを手元に残すことにしました。
それを手にするだけで、いつでも母との思い出がよみがえります。
心を整理するための3つのこと
せわしない日々に、心を落ち着かせる時間は必要不可欠です。ノートのメモを清書したり、本棚を整理したり、ローソクの明かりで過ごしたり。
リラックスして過ごすことが、私にとってのシンプルな暮らしです。
ノートに書きだす
本棚を整理する
ローソクに火をともす
<取材・文/長谷川未緒 イラスト/カトウミナエ 協力/原 秋子>
ドミニック・ローホー(どみにっく・ろーほー)
著述業。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得後、イギリス、アメリカ、日本で教鞭をとる。シンプルな生き方を提唱した著書がベストセラーに。『捨てる贅沢 モノを減らすと、心はもっと豊かになる』『少ないもので料理する シンプルな台所で、ミニマムクッキング』(ともに幻冬舎)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです