(『天然生活』2022年5月号掲載)
小さな幸せを感じて、免疫力をアップ
「免疫力は自律神経の働きが大きく作用します。そのため睡眠、食事、運動の3つが免疫力アップの基本です。ストレスも免疫力を低下させるので、リラックスして心の安定を保つことも大切です」
免疫力向上には一日の始まりである朝の過ごし方が、最も重要になってきます。
「朝は自律神経の切り替えのタイミングなので、朝食で体調を整え、朝から活動的に過ごしたり、心で小さな幸せを感じたりすることで免疫力を高めることができます。さらに朝の過ごし方は夜の睡眠の質にも大きく影響します」
朝にやりたい免疫力を高める習慣
「おはよう」はにっこり笑って
人は笑うだけで免疫力がアップする、という話を聞いたことがありませんか? その理由は、笑うと血行がよくなり新陳代謝が活発になるから。また、笑うことで幸福感を感じさせる「エンドロフィン」が分泌され、自律神経も整うからです。
自律神経が整うと免疫細胞が活性化し、免疫力が高まります。実は、口角を上げるだけでも、免疫力がアップすることもわかっています。
「口角を上げると脳が“楽しい”と勘違いして、幸せホルモンのエンドロフィンやセロトニンを分泌するからです」
さらにセロトニンは腸内環境にも働きかけて免疫力をアップします。
「とはいえ、一日の始まりですから、心からの笑顔で“おはよう”とあいさつできたら気持ちがいいですね」
朝にやりたい免疫力を高める習慣
お見送りのあいさつはハイタッチで
人はスキンシップをすると、幸せホルモンの「オキシトシン」の分泌が増えます。
スキンシップの効果はパートナーや親子といった親しい間柄ほど幸福感や社交性を高め、不安や恐怖心を落ち着かせて安心させるなどの作用があり、免疫力をアップさせます。
赤ちゃんに授乳すると母親のオキシトシンが増えて母乳が出るというのも、スキンシップとオキシトシン分泌の仕組みが働いているから。
朝、おはようのあいさつと一緒に家族とハグをしたり、出かけるときは「いってきま~す」とハイタッチをしたり。そんな小さなスキンシップの朝習慣が、明るく幸せな気分にしてくれます。
人同士だけでなく、犬や猫をなでることも、オキシトシン分泌を促します。
朝にやりたい免疫力を高める習慣
家族を送る、ついでの10分散歩
コロナ禍以降は運動不足になりがちですが、免疫力を上げるには適度な運動は必須。とはいえ、「運動する習慣はなかなか続かない……」という人もいるはずです。
「朝、体を動かすことで、体中の細胞が活性化します。朝からジョギングやウォーキングをするのは大変ですが、ほんの10分だけ近所を歩くのなら続けられるのでは」
目的もなく毎朝歩くのはおっくうでも、家族の通学や通勤を駅や途中まで見送るという理由があれば、「ついで散歩」も意外に続けられそうです。
一緒に歩きながら会話を楽しんだり、道端の草花に季節の変化を感じたりするのも、一日の始まりを気持ちよいものにしてくれそう。
さっそく、今日から「見送りついで散歩」を始めてみませんか。
朝にやりたい免疫力を高める習慣
朝時間に好きな香りを添えて
五感のなかで唯一、直接、脳の感情を司る部分や内分泌、ホルモンのバランスに働きかけるのが「嗅覚」です。
好きな香りをかぐと、ストレスが解消されてリラックスできるほか、自律神経が整うことで免疫力が高まります。
免疫力を高める効果がある精油やハーブもありますが、あまり難しく考えずに、自分が心地よくなれる香りを選ぶのでもOKです。朝のさわやかな気分にぴったりな香りや元気になれる香りを探してみましょう。
「アロマディフューザーやアロマストーンなどを使って空気中に放たれた香りは、鼻から吸い込むことで血液と一緒に全身にめぐり、免疫力を高めます。
その日の気分や体調に合わせて、香りを楽しむ朝時間を過ごしてください」
〈監修/工藤孝文 イラスト/松栄舞子 取材・文/工藤千秋〉
工藤孝文(くどう・たかふみ)
福岡県みやま市の工藤内科院長。福岡大学医学部卒業後、アイルランドとオーストラリアへ留学。現在は同院で地域医療を担うかたわら、テレビ、雑誌などメディアで活躍。専門は糖尿病・甲状腺・高血圧・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病、漢方治療など。著書に『ウイルスに負けない親子の免疫力アップ生活術』(主婦と生活社)ほか多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです