(『天然生活』2022年5月号掲載)
五感を育む季節のあそび
春は自然界からのサインを見つけやすく、和暦と照らし合わせての「答え合わせ」も楽しい時季です。
五感や、「センス・オブ・ワンダー」(神秘に目を見張る感性)を磨き、自然の豊かさを感じましょう。
大切なのは自然との交感。自然の繊細な移ろいを敏感にキャッチし、寄り添う暮らし。そうしていると、おのずと五感は開かれていくと話します。だからこそ、和暦は「知識」ではなく「体感」。
「軒先でツバメを見かけたら、『ああ、暦のうえでは玄鳥至(つばめきたる)のころだな』と思う。それはもう、答え合わせに近い感覚です。昔より自然から離れた暮らしになってしまった現代人にこそ、和暦をきっかけに、自然を身近に感じてほしいです」
花が咲き、草木が芽吹く春。自然界からのサインは、そこかしこから発せられています。
見る
花の色のリレーで季節の移ろいを感じて
自然界の花は早春の黄色から始まり、仲春はピンク、晩春は濃い紅へ。初夏になると新緑とともに白い花に主役交代です。
「自然界の色で、だいたい季節の変化がわかります」。自然界としっかりリンクした、日本の伝統色を見るだけでも楽しい。この季節は晩春の「牡丹」、初夏の「卯の花」など。
聴く
さえずる鳥の声はこの季節が最盛期です
晩春から初夏にかけての音といえば、鳥のさえずり。
「旧暦の4月・卯月は、鳥待月(とりまちづき)、鳥来月(とりくづき)ともいわれていました。鳥たちの恋の季節で、美しくアピールし合う声が、都会でも盛んに聞こえるようになります。そして、さまざまな鳥たちが巣づくりをし、子育てに入る時季でもあるのです」
<撮影/近藤沙菜、高月美樹、田中深春(鳥) 取材・文/鈴木麻子>
高月美樹(たかつき・みき)
和暦、和文化研究家。2003年より月と暮らす旧暦手帳『和暦日々是好日』の製作、発行を手掛ける。『まいにち暦生活』(ナツメ社)など暦に関する本の監修や、講演も行う。手帳はウェブサイトにて販売している。https://www.lunaworks.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです