(『天然生活』2022年5月号掲載)
月の満ち欠けや季節の変化を感じながら暮らす
「センス・オブ・ワンダー」(神秘に目を見張る感性)。取材中、高月さんが何度も口にした言葉です。
「この鳥の声は何? 」
「どうしてこんなところにこの花は咲いているの? 」
自然現象に素朴な疑問をもち、考え、観察し、日々の発見を重ねることで、暮らしはぐんと豊かになると話します。
「月の満ち欠けや季節の変化を感じながら暮らしていると、物事をキャッチする能力は磨かれていきます」
そして、自然の仕組みがわかってくると、「自分は自然の一部で、生かされている」と思い至り、楽になれるのだといいます。
触れる
生命力みなぎる草や大地のパワーをチャージ
「山入り、浜下(はまおり)、踏青(とうせい)、この時季に昔の人は、近くの自然にたくさん触れ、楽しんでいました。はだしになって野や砂浜を歩くだけで、自然の息吹を感じられ、エネルギーをチャージできるんです」
野で草を摘む摘み草、浜で貝を拾うなども、この季節を手軽に「体感」できる遊び方です。
香る
さわやかな風に乗り、青葉やバラの香りが
公園や野を歩くと、若葉や新芽のみずみずしい香りが。深呼吸して「萌える緑」を感じて。
「5月にはバラの香りを楽しんでください。別名『長春花(ちょうしゅんか)』といい、春が終わった、ちょうど清明のころに咲き出します」
公園の花壇、家庭菜園の庭、注意深く探すと、あちこちで見つけられます。
高月さんのスマートフォンにはバラの写真コレクションが。
「近所に『バラの館』があるもので、毎年激写させてもらっています。『薫風(くんぷう)』は初夏の若葉が香るころをさす季語ですが、バラの甘い香りもふんわり漂ってくる、本当にさわやかな季節ですね」
<撮影/近藤沙菜、高月美樹 取材・文/鈴木麻子>
高月美樹(たかつき・みき)
和暦、和文化研究家。2003年より月と暮らす旧暦手帳『和暦日々是好日』の製作、発行を手掛ける。『まいにち暦生活』(ナツメ社)など暦に関する本の監修や、講演も行う。手帳はウェブサイトにて販売している。https://www.lunaworks.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです