• 暮らしのなかに春夏秋冬の草花、木の実を取り入れて、季節の移ろいをもっと身近に感じてみませんか。花の教室「日々花」を主宰する雨宮ゆかさんのしつらいとエッセイを、写真家の雨宮秀也さんの美しい写真とともにご紹介いたします。今回は、春にたのしめる西洋蒲公英〈セイヨウタンポポ〉です。
    (『百実帖』より)

    春を運び去る

    うらうらと、上天気の昼上がり。すっかり伸びた草の間をぬって、蒲公英の綿毛がきらめいている。

    足元の一本を手折り、ふーっと息を吹きかける。風にうまく乗ると、どこへともなく旅立っていく。

    飛ばすことはあっても、生けることはあまりしない。どこかで採っても、持ち帰るまでに飛んでいってしまうこともしょっちゅうだし、室内のあちこちに落ちる綿毛は、掃除が面倒でもある。

    それでも、遊び心が働くとでもいうのだろうか。たまにちょっと生けてみたくなる。ままごと気分で摘むのもたのしい。なのに、飾った綿毛を眺めているうち、どうしたものかしんみりしてしまう。

    ハル、ハズゴーン、だね。

    掘りたての竹の子を前にした、友人のことばを思い出す。

    竹の子も蒲公英も、その生長とともに、春を運び去ってしまう。

    ゆく春を惜しむ。出会いは嬉しく、あと味はちょっぴりせつない植物なのだ。

    西洋蒲公英〈セイヨウタンポポ〉
    春|キク科 多年草

    アルミの容器に西洋蒲公英〈セイヨウタンポポ〉を生ける

    生けるときは

    綿毛の中心部がしっかりしていそうなのを選ぶと

    心なし保ちが違う気がしている。

    花材

    西洋蒲公英(セイヨウタンポポ)/ 黄金小手毬(オウゴンコデマリ)/黄華鬘(キケマン)

    花器

    アルミの容器

    ※ 本記事は『百実帖』(エクスナレッジ)からの抜粋です

    〈スタイリング・文/雨宮ゆか 撮影/雨宮英也〉

    ◇ ◇ ◇

    『百実帖』(エクスナレッジ)

    『百実帖』(雨宮ゆか・著、雨宮秀也・写真/エクスナレッジ)

    画像2: 西洋蒲公英(セイヨウタンポポ)のこと。身近な草花、木の実のたのしみかた「百実帖」雨宮ゆか、雨宮秀也

    amazonで見る

    雨宮ゆか(あめみや・ゆか)

    花の教室「日々花」主宰。神奈川県生まれ。季節の草花を生活に取り込む「花の楽しみ方教室」を東京・大田区のアトリエを拠点として全国に発信。工芸作家とコラボした花器の提案をおこない、各地のギャラリーで企画展を催す。花にまつわる執筆やスタイリングなどを手がけ、メディア掲載も多数。 著書に『花ごよみ365日』(誠文堂新光社)、『百花帖』『百葉帖』(ともにエクスナレッジ)がある。

    雨宮英也(あめみや・ひでや)

    写真家。東京都生まれ。梅田正明氏に師事の後独立。食器、家具、住宅など生活にかかわるプロダクトを主に撮影。人の暮らしが伝わる建築写真に定評がある。 近刊に『小さな平屋。』『自然と暮らす家』(ともにエクスナレッジ)など。



    This article is a sponsored article by
    ''.