• 大人世代が抱える「こころとからだ」のお悩みや疑問について、頭痛・漢方専門「らいむらクリニック」の來村昌紀先生が、やさしく回答。今回は、体質改善のための漢方の考え方を知りたいという、めるしーさんのお悩みにアドバイスをお送りします。

    : 体質改善したいです。「気血水」の考え方と優先順位は?

    画像1: 体質改善と免疫力アップのために「気血水」のバランスを整える。漢方の考え方ときほんの知識|來村先生のこころとからだのお悩み相談室

    今年こそ疲れやすい体質を改善したい!

    免疫力アップや体質改善のために、漢方の知識を教えていただきたいです。

    たとえば、漢方では体の不調を整えるためには、血液や気の流れをよくするための「気血水」の考え方が大事だと聞きました。

    ある本で、「血がつくれない=気虚体質、血が足りない=血虚体質、血が流れない=瘀血体質」とし、気虚、血虚、瘀血の順に改善するのが望ましい(血がつくれる体をつくるのがまず先)と書かれていました。先生のお考えはどうでしょうか?

    体質改善のための優先順位などがあれば教えてください。

    (めるしー さん/50代・パートタイム)

    :体質改善のためには、「気血水」のバランスが整っていることが大切です

    画像2: 体質改善と免疫力アップのために「気血水」のバランスを整える。漢方の考え方ときほんの知識|來村先生のこころとからだのお悩み相談室

    漢方では「真ん中が大切」という考え方があります

    東洋医学で大切な「気血水」という考え方

    今回は体質改善のための漢方の考え方のご質問です。この部分が最も大事なのですが、用語が難しいために嫌厭されがちな部分でもあります。

    めるしーさんのご質問のように漢方には気血水という考え方があります。

    「血」は西洋医学でいうところの栄養状態や血流の概念です。この血が足りない、つまり栄養状態が悪いことを血虚といいます。

    具体的にはお肌がガサガサ、爪が割れやすい、髪の毛が抜けやすいなども血虚の状態です。

    また血の流れが悪いことを瘀血といいます。具体的には目の下のクマができやすい、肩こりや生理痛がひどいなども瘀血の状態です。

    「水」は西洋医学でいうところの水分代謝の概念です。西洋医学では水分が足りなければ脱水、過剰であれば浮腫ということになります。漢方では水毒、水滞といいます。

    最後に「気」の概念です。気は目に見えないエネルギーの概念で、実は西洋医学には、この概念がありません。なぜなら、西洋医学は科学なので、目に見えない、客観的に評価できないものはいわないのです。

    貧血や栄養状態、脱水や浮腫の程度は検査や診察である程度客観的に測れるので科学(西洋医学)の土台にのるのですが、目に見えない気は現在の西洋医学では残念がら客観的に検査で測ることができません。

    漢方ではこの気の概念を考えることが西洋医学にない利点なのです。気が足りないことを気虚といって元気、パワーがない状態で疲れやすい、食後眠くなる、寝汗をかきやすいなども気虚の状態です。

    気のめぐりが悪いことを気鬱あるいは気滞といって気分が鬱々とする、お腹にガスが溜まって張るなどの症状も気鬱の状態です。

    また気が昇ることを気逆といって顔がのぼせる、動悸がしたり、めまいがするなども気逆の状態です。

    この西洋医学では考えない気の概念なのですが、実際には日常生活で私たちはこの概念をとてもよく使っています。

    たとえば、「元気そうですね」とか、「天気」とか、「気がはれました」とか、「気が滅入る」とか、ちょっと怖いものになると「殺気」なんていう言葉もありますね。(洒落ではないのですが)気の長い、根気のある人がいて、この気がつく言葉を数えた人がいます。なんと358あるらしいですよ!

    気血水を整えるために大切なことと、優先順位

    東洋医学ではこの気血水を考えることで、たとえば気が足りなければ、気を補う漢方薬、気のめぐりが悪ければ気のめぐりを良くする漢方薬、血が足りなければ血を補う漢方薬、血のめぐりが悪ければ血のめぐりを良くする漢方薬、水分代謝が悪ければ、水分代謝を良くする漢方薬がそれぞれ用意されています。

    気血水の優先順位なのですが、どれも大切でそれぞれのバランスが整っていることが大切です。

    ただ、めるしーさんのご質問にもあったように、栄養状態が悪く(血虚)で栄養(血)を補いたい場合でも、あまりに元気がなく、気が虚していて食べる元気がない、食事を受け付けないなどの場合には、まずは気の状態を良くして、食べる元気をつけることを優先させるという考え方もありますね。

    何事もやりすぎはよくない

    免疫アップや体質改善のための漢方の考え方としては、中庸といって真ん中が大切だという考え方です。

    やりすぎはいけないということです。たとえば運動が体によいからといってやりすぎると疲れてしまいます。

    またある食べ物が体によいからといって、そればかり食べるとかえって害になる場合も出てきます。

    当たり前のことになるのですが、規則正しい生活バランスの取れた食事や適度な運動規則正しい睡眠、そして季節や天候に合わせた生活の仕方、体調に合わせて無理をしないということが一番大切で、それでも、どうしても気血水のバランスが崩れてしまった時は、うまくそれらを調整する漢方薬を使うというのが正解なのかもしれませんね。

    今回の回答がめるしーさんはじめ、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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    〈イラスト/コグレチエコ〉

    画像: 何事もやりすぎはよくない

    來村昌紀(らいむら・まさき)

    頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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