丸2年伸ばした髪をカットして、清々しさに包まれた
残っていたカラー部分の髪をカットして、2年かけ、本来の髪色に戻りました。髪を切ったあと感じたのは、清々しさ。この気持ちは、経験してはじめて知ったことです。
白い髪になった時「ここから新しいスタート」と気持ちが切り替わりました。この2年は、そのスタートラインに立つまでの時間だったのかもしれません。ここから「これからどうしていこう」という思いに包まれました。
人は、節目節目に気持ちを新たにします。新年、新しい月、誕生日もそうですね。それと同じように「白い髪」もひとつの節目になるようです。
新しい髪色になり、わたしの未来が見えてきた
明るい色の服を試してみたり、したことのないメイクをすることも新しいスタートのひとつです。髪色が落ち着いたことでベースが整い、それに合わせ選べるようになりました。今後は、髪の白い部分が増えていくだけなので想像もつきます。それだけではありません。いままでとは少しちがうギアでこれからを捉えられると感じました。
わたしは、歳を重ねることは、ギアチェンジに近いと考えています。いままでトップに入れていたギアを、セカンド、サードにしていくイメージです。自分の道をどう走るのか──。速いスピードはその魅力がありますし、抑制の効いたスピードにも魅力があります。何か起きたとしても衝撃も少ない。髪色が変わったことで「そろそろ次のギアへ」と移った気がしています。59歳になったいま、60歳という年齢をうまく迎えられそうです。
わかっているのは、確実に歳を重ねていくこと。調子がいい時もあれば、よくない時もでてくるでしょう。それは年々増えていき、抗しても多くのことが低下していくはずです。時に不安やかなしみにつつまれ、押しつぶされそうになりますが、それが、歳を重ねていくことの一面でもあります。
力が抜けて自分らしく
白い髪にしたことで、無理に前向きにならなくてもいい、とふと思いました。かと言って、ネガティブに囚われることもありません。肯定も否定もないというのでしょうか。時によろこび、楽しみ。時に涙する。それが、生きることです。
長かった髪を切り、本来の髪色に戻ったら、何かから解放されました。何か──は、年齢や社会的立場やジェンダーや普段、意識していないもの──なのかもしれません。さあ。59歳がはじまります。
60歳のメモ
1 自分のなかでリズムのいい節目を見つける
2 節目節目に気持ちを新たに
3 ストレスに感じていることを手放せるようにしてみる
4 コントロールできるものとできないものを意識する
5 機嫌よくいる
カット・スタイリング/撮影 インスタグラム:@magemori(SHI/GE)
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19