• 自然豊かな奄美大島でハーブを育てながらハーバリストとして活躍する石丸沙織さん。ハーブを使った「ハーブビネガーチンキ」のつくり方を教わりました。
    (『天然生活』2023年6号掲載)

    酸味がやわらかく、香りもいい「ハーブビネガーチンキ」

    ハーブはフレッシュ(生)で使うこともあれば、乾燥させてお茶として飲んだり、アルコールやグリセリンなどにつけ込み「チンキ」にして、長く保存して使うこともあります。

    そして夏には「アップルサイダービネガー」(りんご酢)につけた「ビネガーチンキ」もおすすめとハーバリストの石丸沙織さん。

    「留学時に学んだハーブ活用法で、イギリスはりんごがたくさん収穫できるお土地柄。手づくりすると市販のお酢とは違って酸味がやわらかく、香りもいい。ハーブと合わせたときに、純粋に『おいしい!』と感じられたんです」

    ビネガーでつくったチンキは、汗で失われがちなミネラル類を、植物からしっかり抽出してくれるので、夏の間はとくに活用したいもの。

    お好みのハーブをつけ込んで、水や炭酸水で割ったり、料理酢として活用してみたり、自分なりに楽しんでみてください。

    ビネガーチンキの利点

    ◯ 収れん作用、解熱作用があり、夏の暑い時季に重宝

    ◯ 消化吸収、排せつを助けるので、胃腸が弱ったときによい

    ◯ 植物のミネラル分をとくによく抽出してくれる

    ◯ 肝臓の働きを助ける

    アップルサイダービネガーのつくり方

    チンキのベースとなるビネガーですが、そのまま活用も可能。りんごの品種によって、色や味わいが変わります。

    材料(つくりやすい分量)

    画像: 材料(つくりやすい分量)
    ● りんご(皮・芯ごと)500g
    ● 砂糖(写真はざらめを使用)1カップ
    ● 水(浄水が望ましい)2L
    ● アップルサイダービネガー(※)100mL

    ※ 自然発酵で加熱処理をせず、無濾過で酵素を含んだもの。今回は「アリサン」の「エデン 有機アップルビネガー」を使用。自作をしたら、以後はそれを使うとよい。

    道具

    ● 2L用のガラス保存瓶 1個1個
    ● ガーゼまたは布、ひも、pH試験紙各適量

    つくり方

     りんごを皮ごと8等分のくし形切りにし芯を取り、さらにそれを半分に切る。

    画像1: つくり方

     保存瓶にりんご(芯ごと)、砂糖を入れ、水1L、アップルサイダービネガーを注ぎ、残りの水を瓶の肩まで注ぐ。木のスプーンを使い、よく混ぜる。

     布をかぶせ、ひもで口をきっちり結ぶ。(密閉すると発酵過程で噴き出したり、ふたが飛んでしまったりするので注意)

    直射日光が当たらない場所で、2週間ほど発酵させる。(発酵の適温は21~27℃。最初の1週間は、1日1回木のスプーンで混ぜる)

    画像2: つくり方

     ぶくぶくした発酵が収まってきたら、ざるでこし、液体と果実に分ける。表面に膜が張っていることがあるので、それは取っておく。

     こした液体、膜を瓶に戻し、再び布をかぶせ、ひもで口を結び、さらに1カ月ほど寝かせる。pH試験紙につけ、pH3になっていたらでき上がりの目安。

    さらに1~2カ月ねかせると、酸味が落ち着いてまろやかな味わいに。

    ボトルに詰め、ビネガーチンキや料理、次のアップルサイダービネガーをつくるときなどに使用する。(ビネガーを仕込む際は、液体や膜、おりなども一緒に入れるとよい)

    ★ビネガーをつくったあとの保存

    画像1: ハーブビネガーチンキのつくり方/ハーバリスト・石丸沙織さん

    発酵途中はガスが出るので、密閉はせず、布のふたで保存を。

    画像2: ハーブビネガーチンキのつくり方/ハーバリスト・石丸沙織さん

    発酵が完全に終わったら、おりも一緒に瓶に移し変えるとよい。

    ビネガーチンキの例

    ローゼル+オレンジピール+カルダモンのビネガーチンキ

    画像: ローゼル+オレンジピール+カルダモンのビネガーチンキ

    クエン酸たっぷりのローゼルに、食欲不振に効果的なオレンジピール、めぐりをよくするカルダモンをブレンドした、色合いも美しいチンキ。

    水で割れば、暑い日に外から帰宅したときなどの水分補給にぴったり。人が集まる日のウエルカムドリンクにも。

    セージ+タイムのビネガーチンキ

    画像: セージ+タイムのビネガーチンキ

    余分な水分調整してくれるセージに、スパイシーで体内の滞りを動かしてくれるタイムをブレンド。

    夏に水分をとりすぎて、おなかの調子が悪い人におすすめ。

    また、はちみつを加えてお湯で割れば、クーラーで喉を痛めている人などにおすすめです。

    次回は、ハーブビネガーチンキの使い方をご紹介します。どうぞお楽しみに!


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    〈撮影/砂原 文 構成・取材/田中のり子〉

    石丸沙織(いしまる・さおり)

    英国メディカルハーバリスト、アロマセラピスト。イギリスでハーブ医学を学んだのち、東京、香港を経て、2011年より鹿児島県奄美大島在住。地域に根差したハーバリストとして、身近なハーブを暮らしに取り入れたケアを広めている。菓子研究家・長田佳子さんとの共著に『ハーブレッスンブック』(アノニマ・スタジオ)、訳書に『フィンランド発 ヘンリエッタの実践ハーブ療法』(フレグランスジャーナル社)がある。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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    『ハーブレッスンブック』(石丸沙織・長田佳子・著/アノニマ・スタジオ・刊)

    画像3: ハーブビネガーチンキのつくり方/ハーバリスト・石丸沙織さん

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    メディカルハーバリストの石丸沙織さんと菓子研究家・長田佳子さんは2018年より「herb lesson」を開催してきました。ハーブのテイスティングとそのシェアリングに時間をかけ、教科書的なハーブの知識だけではなく、それらが使う人の心身にどのように響くかを大切にしています。

    ハーブティー、ブレンドの考え方、ハーブバス、チンキなどのレメディ、ハーブの風味を味わうお菓子を暮らしに取り入れてみましょう。自分の感覚を大事にする、こころとからだを癒すセルフケアの方法やアイデアをご紹介します。

    ハーブとの出逢いを通して、新しい自分に出逢える一冊です。



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