(『天然生活』2022年10月号掲載)
暮らしに合わせて変化し続けるDIY収納
窓から明るい光が差し込む土間の台所。たくさんの道具が吊り下がっているこの場所で、木工作家、うだまさしさんと妻のゆかさん、そして2人の子どもたちのにぎやかな声が飛び交います。
「忙しいときは家族でこのあたりに座って昼食をとることも。土間が床から一段下がっていて、段差に腰かけられるのもいいんです」
うださんの工房と自宅兼ギャラリーがあるのは埼玉県秩父郡皆野町。5年半前、この土地に建つ古い木造家屋を自分たちの手で改装し、心地よい住まいによみがえらせました。
台所も土間を残しつつ、一からつくり上げたもの。手づくりの棚に古道具店で買ったという和箪笥などを組み合わせた台所には、「使い込むほどに味わいが増すものが好き」と話すうだ夫妻らしさが詰まっています。
「収納用のまとまったスペースはないし、壁は漆喰なので釘を打てない。いろいろな制約があるなか、工夫しながら空いている場所に少しずつ収納を足していきました」
限られた空間をいかに機能的にするか。それが考え抜かれた台所には、至るところに工夫が潜んでいます。とりわけ目を引くのが「吊るす」収納です。
棚板や木の柱に取り付けたバーやフックには、木のお玉、へら、ざる、まな板、鍋や鍋のふたまで、ありとあらゆる台所道具が吊るされています。
「この場所は湿気がこもりやすいので、しまい込む収納にはしたくありませんでした。とくに我が家は木の道具が多いので、しっかり乾かせるほうがいい。鍋などもすぐに手に取れるので便利です」
うだまさしさん、ゆかさんの収納アイデア
シンクまわり
シンク上の棚にバーを付け、まな板などの調理道具を吊るして風通しよく。
「洗ったらそのまま吊るして乾かすので、ふく手間が省けます」
ラップの代わりとしてもよく使う雪平鍋のふた。シンク上の棚板にフックを打ち付けて定位置を決め、いつでもさっと取りやすいように。
洗った木のカトラリーは、竹串を差して高さを出したざるの上で乾かす。菜箸を4本渡し、その上に並べるのは通気性をさらによくする工夫。
シンク下
友人にキャスターを付けてもらったステンレスの棚。上段に食用油や鍋、下段には掃除道具などを収納。引き出せば作業台としても活躍する
<撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子>
うだ・まさし、ゆか
大道具会社、家具工房での勤務を経て2011年、「monom」として活動を始める。木の器やカトラリー、カッティングボードなど、暮らしにまつわるものを制作している。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです